研究課題/領域番号 |
23K08306
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
市原 正智 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (00314013)
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研究分担者 |
村雲 芳樹 北里大学, 医学部, 教授 (40324438)
祖父江 沙矢加 中部大学, 臨床検査技術教育・実習センター, 准教授 (50513347)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 胸腺腫 / ミトコンドリア / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
ヒトのB1型胸腺腫に酷似した組織型の胸腺腫を遺伝的に100%発症するBUF/Mna系ラットの検討より、胸腺腫発症にはミトコンドリア動態関連遺伝子のBUF/Mna系ラット型変異が関与している可能性を見出した。本年度は、BUF/Mna系ラット胸腺腫由来MTHC-1細胞株を用いて、ゲノム編集により変異修正MTHC-1細胞株を作製し、野生型とミトコンドリア動態の定量的解析を行うとともに、細胞増殖への影響を検討した。野生型MTHC-1細胞株は、変異修正型細胞株と比較して、有意にミトコンドリアが断片化することを定量的に確認した。また、変異修正MTHC-1細胞株では、野生型に比して有意な細胞増殖抑制が観察された。現在、細胞内シグナルの変化について検討を進めている。我々は同時に、胸腺腫原因遺伝子由来変異(BUF/Mna型変異)を導入したマウスを樹立し、表現型の確認を進めている。このマウスは、導入した遺伝子変異をホモ接合体として有するように交配し(BUF/Mna型変異ホモ化マウス)、その後2年間飼育して、変異導入の影響を検討した。5匹の24月齢マウスを解剖し、胸腺腫の有無を検討したが、肉眼的にはBUF/Mna系ラットで観察されたような胸腺腫の発症は確認できなかった。そこで、更に組織学的な検証を進めている。BUF/Mna系ラットよりACI系統に胸腺腫発症関連部位を移入したコンジェニック系統の観察では、24月齢程度の期間後に観察される胸腺腫は、顕微鏡的なサイズの結節状胸腺上皮の増殖にとどまり、胸腺腫発症にはさらにTen-1, Ten-2といった胸腺増大遺伝子座の関与が必要であることが報告されている。BUF/Mna型変異導入ノックインマウスでも同様の機序により、ミトコンドリア動態の異常に加えて他の遺伝子の関与が必要である可能性があると推測し、検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、ミトコンドリア動態の定量的解析方法の確立により、BUF/Mna系ラット胸腺腫由来MTHC-1細胞株がゲノム編集によりBUF/Mna系ラット固有の変異を修正した株と比較して、有意にミトコンドリア動態は分裂傾向を示すとともに、細胞増殖が促進していることを明らかにすることができた。当初の計画では、MTHC-1細胞株とは逆にBUF/Mna系ラット型変異を導入した細胞株でのミトコンドリア動態と細胞増殖の関連も検討する予定であったが、安定してミトコンドリア動態の定量的解析を行う方法の確立に時間を要したため、次年度以降に引き続き検討を続けることとした。BUF/Mna系ラット胸腺腫の原因変異を導入したマウスでの胸腺腫発症の再現性の確認には、過去の報告を参考に2年間の観察期間を設定したため、この詳細な検討についても来年度に行う予定である。以上の点から、進捗状況はやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
1) 細胞株レベルでの胸腺腫原因遺伝子由来変異(BUF/Mna型原因遺伝子変異)が細胞機能に及ぼす影響の検討を、現在評価を行っているゲノム変異修正株に加えて、BUF/Mna型原因遺伝子変異を有する原因遺伝子の強制発現系、ゲノム編集によるBUF/Mna型原因遺伝子変異の導入細胞株においても、ミトコンドリア動態と細胞増殖の関連について検討をさらに進める。2) 胸腺腫原因遺伝子由来変異(BUF/Mna型原因遺伝子変異)導入ノックインマウスの表現型の確認をさらに例数を増やして行い、微細な胸腺腫様結節の有無についての組織学的確認を行うとともに、過去の報告で胸腺増大遺伝子とされた遺伝子のBUF/Mna型固有の変異の有無について検討を加える。3) ヒトの胸腺腫におけるミトコンドリア動態の検討についても、来年度よりGDC Data Portal (TCGA)で公開されている結果をミトコンドリア動態の視点で検討を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度はミトコンドリア動態の定量的解析を行う方法の確立に時間を要したことで進捗状況が遅れ、予定通りの予算執行とはならなかった。2024年度では、細胞培養関連の支出や変異導入マウスからの標本作製など、広範な解析を予定しており、こうした検討に残余予算を執行する予定である。
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