研究課題/領域番号 |
23K08322
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
竹中 朋祐 九州大学, 大学病院, 准教授 (20645361)
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研究分担者 |
河野 幹寛 九州大学, 大学病院, 助教 (00906323)
高森 信吉 九州大学, 大学病院, 医員 (20839542)
岡本 龍郎 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, 呼吸器腫瘍科部長 (80568626)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | グルタミントランスポーター / 肺腺癌 / SLC38A7 / 腫瘍微小環境 |
研究実績の概要 |
低グルタミン環境下において、腫瘍細胞はマクロピノサイトーシスを介してアルブミンをリソソーム内に取り込み、グルタミンに分解する。そのグルタミンはSLC38A7遺伝子がコードするSNAT7を介して細胞内に輸送され、腫瘍の増殖・生存に利用される。これまでの研究で、SLC38A7はグルタミン低環境下での肺扁平上皮癌細胞の生存に必須のグルタミントランスポーターであり、有望な治療標的となりうることを示している。また、グルタミン阻害がT cellを活性化する一方で、代表的な免疫チェックポイント分子であるprogrammed cell death-1 ligand 1 (PD-L1)の発現を誘導し、腫瘍の免疫逃避を誘導するとの報告もある。 肺腺癌におけるSLC38A7の意義についての報告はなく、まず肺腺癌切除症例を対象にSLC38A7の意義について検討を行った。373例の肺腺癌切除症例の切除標本を用いて、免疫組織化学染色を行い、SLC38A7蛋白発現の評価を行った。SLC38A7高発現150例、低発現223例に分類し、切除後の無再発生存、全生存を比較検討したところ、SLC38A7蛋白高発現は低発現と比較し、無再発生存、全生存とも有意に予後が不良であった。 次に進行・再発非小細胞肺癌において、同様の検討を行った。239症例を高発現140例、低発現99例に分類し化学療法後の無増悪生存、全生存を比較したところ、高発現群で無増悪生存、全生存とも有意に予後が不良であった。また、SLC38A7蛋白発現とPDL-1蛋白発現の関連を検討したところ、SLC38A7高発現は有意にPDL-1陽性症例を多く認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで肺腺癌切除症例、進行・再発症例におけるSLC38A7蛋白発現の予後に与える影響を評価し、扁平上皮癌切除症例と同様にSLC38A7蛋白発現が亢進している症例は予後が不良であることが判明した。引き続き、腫瘍微小環境とSLC38A7の関係について切除標本ならびに細胞実験で評価するとともに、動物実験を次年度に行う予定である。 これまでのところ、計画通り研究を進めており、順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在、切除標本における腫瘍浸潤リンパ球の評価を行うとともに、細胞株を用いてSLC38A7ノックダウン群とcontrol群での腫瘍増殖能、腫瘍浸潤リンパ球のフェノタイプや腫瘍のPD-L1発現の相違を評価している。 その後、動物実験として肺癌細胞株とSLC38A7ノックダウン肺癌細胞株をマウスの皮下に投与し、腫瘍増殖能の相違や、腫瘍微小環境の評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会出張などの経費を算出していたが、研究成果が進展した状態で発表を行う予定であり、翌年度以降に使用することとした。
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