研究課題/領域番号 |
23K08328
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
廣田 弘毅 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (30218854)
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研究分担者 |
佐々木 利佳 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (10345572)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 神経ネットワーク / 相互相関係数 / 断片化 / 全身麻酔薬 / 嗅内皮質 / ラット |
研究実績の概要 |
側頭葉嗅内野は脳への情報入出力ゲートであることから,全身麻酔薬の作用部位の1つである可能性が高い.今回我々は,独自に作製したラット嗅内皮質スライスの神経ネットワークに及ぼす全身麻酔薬の作用を検討した. 方法:実験に先立ち動物実験倫理委員会の承認を得た(A2021医-2).麻酔した雄性ウィスターラットから脳を摘出し,嗅内皮質スライス(0.4mm)を作製した.嗅内野外側および内背側に2本の細胞外電極をそれぞれ刺入し,θ波(4-8 Hz)を記録した.θ波は空間認知に関連する脳波であり,アセチルコリン作動薬であるカルバコール前処置により誘発できる.2つの神経ネットワークのθ波を相互相関解析したヒストグラムおよび相互相関係数(CCF)を算出し検討に用いた.CCFは,2つのネットワークの相互相関が高いと1.0に近い値をとり,ネットワークが断片化すると0に近づく.結果は平均±標準偏差で表した.検定はpaired-t検定を用い,P<0.05を有意とした. 結果:カルバコール前処置後のCCFは0.68±0.13 [n=18] を示した.揮発性麻酔薬デスフルラン(6%)投与により,CCFは0.32±0.15 [n=7] と有意に抑制されたことから,揮発性麻酔薬デスフルランは神経ネットワークを断片化すると考えられた. 結論:今回の検討から,揮発性麻酔薬デスフルランは神経ネットワークの断片化を生じることが明らかになった.神経ネットワークの断片化は,全身麻酔薬に特有のメカニズムである可能性を検討したい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のため十分な情報収集ができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
今回の検討から,揮発性麻酔薬デスフルランは神経ネットワークの断片化を生じることが明らかになったが,この神経ネットワークの断片化が全身麻酔薬に特有のメカニズムであるかどうかを検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため十分な情報収集ができず,その結果,購入予定物品の採用検討に時間がかかり発注を先送りしたため.
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備考 |
全身麻酔のメカニズムには依然不明な点が多いが,近年ではパッチクランプ法をはじめ,遺伝子工学やクライオ電子顕微鏡などの先進技術を駆使した解析も進み,麻酔迷宮の一端が解き明かされようとしている.麻酔薬の作用機序仮説について,我々の研究成果を中心に紹介したい.
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