研究課題/領域番号 |
23K08338
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
田中 基 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (20303787)
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研究分担者 |
志田 恭子 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 臨床研究医 (00381880)
大澤 匡弘 帝京大学, 薬学部, 教授 (80369173)
祖父江 和哉 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (90264738)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 痛み認知 / γ帯域脳活動 / 慢性疼痛 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、侵害刺激を受けることにより認められる周期的脳活動の変化のうち、γ帯域(40-120 Hz)の脳活動に注目し、痛みの脳領域感の情報処理機構を解明することである。この目的を達成するため、慢性疼痛のモデル動物である神経障害性疼痛モデルを用いて、周期的脳活動を複数の脳領域から記録した。 神経障害性疼痛モデルにはSpared Nerve Injury (SNI)モデルを用いた。SNIモデルにおいて、側坐核ならびに前頭前皮質におけるγ帯域の周期的脳活動が上昇しており、神経障害後2ヶ月間にわたりγ帯域周期的脳活動が上昇することを見出した。その他の領域では、γ帯域の周期的脳活動の変化は認められなかった。現在、測定をしている動物数を増やして検証を行っている。次に、カルシウム指示タンパク質であるGCaMP6をγ帯域脳活動の上昇が見られた側坐核ならびに前頭前皮質へ発現させるため、アデノ随伴ウィルスベクター(AAV)を用いて、GCaMP6sタンパク質をシナプシンプロモーターの下流に配置し、神経細胞特異的にGCaMP6sを発現させた。側坐核ならびに前頭前皮質へAAVを微量注入することで、遺伝子導入が達成されることをGreen Fluorescence Protein (GFP)を発現するAAVを用いて確認した。次に、人為的に神経細胞の機能を時空間的に自由に操作するために、内因的なリガンドに反応せず、人工的なリガンドのみに反応する変異型受容体(DREADD)であるhM3Dq(興奮性)およびhM4Di(抑制性)をAAVにより特定の脳領域へ発現させることに成功した。 次年度は、DREADDを用いて、側坐核および前頭前皮質を時空間的に自由に制御することで、γ帯域脳活動が影響を受けるのか、また、神経障害性疼痛で見られた痛み閾値の低下に影響が見られるのかを検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に計画した内容に沿って問題なく進行しており、研究計画は順調である。 結果についても、複数の脳領域における周期的脳活動の解析を行い、γ帯域の周期的脳活動の変化が認められる領域の探索的な検討を行うことができた。また、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を用いた遺伝子導入についても、AAVの作成から特定の脳領域への局所投与の手法を確立することができ、側坐核や前頭前皮質への遺伝子導入も可能となっている。人為的に神経活動を時空間的に制御できる手法である、デザイナー受容体(DREADD)を用いた化学遺伝学的手法についても、特定の脳領域の特定の細胞のみに遺伝子を発現させることができるため、γ帯域の周期的脳活動を生み出す脳領域の同定もできる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、多点の脳活動の同時記録を自由行動下の神経障害性疼痛モデルマウスにおいて継続的に行い、側坐核および前帯状回皮質のγ帯域周期的脳活動を引き起こす脳領域や周期的脳活動を同定し、側坐核および前帯状回皮質のγ帯域脳活動のトリガーとなる脳活動を抽出する。また、カルシウムイメージングを行い、γ帯域周期的脳活動の見られるタイミングで、側坐核や前頭前皮質において、集団神経活動発火が変化する細胞群を同定する。γ帯域周期的脳活動のトリガーの候補となる脳領域については、デザイナー受容体(DREADD)を用いた人為的な神経活動の時空間的制御により、その脳領域の役割について、大規模脳活動記録ならびに行動学的解析により明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度も多点の脳活動の同時記録を行うため、電極の修理部品やモデルマウス作成のための動物購入費が必要である。カルシウムイメージングのため、専用の対物レンズであるGRINレンズも購入予定である。
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