研究実績の概要 |
本研究ではFXIa拮抗薬の使用により線溶活性化が生じるという仮説のもとに、今後臨床導入が期待されているFXIa拮抗薬による凝固線溶系への影響について各種凝血学的検査を用いて明らかにすることを目的としている。 健常者から得られた乏血小板血漿を用いて、抗FXIモノクローナル抗体(MAB24601)を0,2,5,10,20,50,100μg/mLとなるように濃度調整し、さらに組織プラスミノーゲン(t-PA)を100ng/mLとなるように添加調整した線溶亢進モデルを作成した。作成したこれらの検体に対して血液粘弾性検査、トロンビン生成試験を行った。その結果、抗FXIモノクローナル抗体によって凝固開始時間が延長し、トロンビン生成が抑制されているという結果が示された。またt-PAを添加した線溶亢進モデルでは線溶亢進波形が観察された。 これらの結果を受けて、次に抗FXIa薬であるabelacimabを用いて実験を行った。健常者検体から得られた乏血小板血漿にabelacimabを添加し、0,2,5,10,20,50,100μg/mLとなるように濃度調整、さらにt-PAを100ng/mLとなるように添加調整した線溶亢進モデルを作成した。作成した検体に対して血液粘弾性検査を行った。結果、abelacimabによって凝固開始時間は延長したが、線溶反応は安定して観察することができなかった。 今後はt-PAの添加濃度の調整を行うとともに、トロンビン生成試験に加えてフローチャンバー実験、凝固時間測定、凝固因子定量を行っていく予定である。
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