研究課題/領域番号 |
23K08357
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
田中 聡 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (60293510)
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研究分担者 |
布施谷 仁志 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (00588197)
石田 公美子 (松尾公美子) 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 助教 (80467191)
川真田 樹人 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (90315523)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 局所麻酔薬 / 術後痛 |
研究実績の概要 |
近年では、術前から抗凝固療法を行う患者が増えた。周術期の鎮痛目的で、硬膜外麻酔などの中枢神経系に近い部位を穿刺し局所麻酔薬を投与することを避け、より末梢で局所麻酔薬を投与することが増えている。末梢部位で局所麻酔作用を発揮するためには、比較的大量の局所麻酔薬を必要とする。申請者は、これまで局所麻酔薬のラット開腹モデルを用いて切開された筋に対する筋損傷や修復への影響を報告した。しかし、末梢組織に比較的大量に局所麻酔薬を投与した際の鎮痛メカニズムの詳細は未だ明らかになっていない。 本研究の目的は、開腹後の創部近傍に局所麻酔薬を投与した際の鎮痛メカニズムを明らかにすることであった。麻酔下ラットの腹部に長さ2センチの切開を作り、臨床的に広く用いられている局所麻酔薬であるロピバカインを投与し、痛み関連行動分析(自発痛と誘発痛)と脊髄における神経活動性マーカーの免疫染色を行った。ロピバカインに投与により、自発痛と誘発痛の痛み関連行動は減弱し、痛覚過敏領域の縮小傾向が観察された。右腹部の開腹手術が実施されたが、局所麻酔薬の創部投与により、右腹部だけでなく、左腹部の痛覚過敏が減弱した。創部から離れた背部に局所麻酔薬を投与すると、左腹部の痛覚過敏減弱傾向がみられたが、全身作用については今後の詳細な検討が必要である。また、ロピバカイン投与により、脊髄後角における活性化されたニューロン数の減少が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロピバカインを創部近傍に投与することにより、侵害刺激情報が脊髄へ伝達されることが妨げられた結果、痛み関連行動が減弱することを示せた。これは令和5年度の成果であり、その点はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今回は、局所麻酔薬の投与により局所での作用が鎮痛効果の主たる理由であることが示せたが、痛みの範囲が狭くなることについては、局所麻酔薬の全身作用の評価が必要になる。局所麻酔薬の血中濃度の評価も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、令和6年度請求額と合わせて使用する予定である。実験動物、抗体、薬剤の購入に充てる予定である。
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