研究課題/領域番号 |
23K08362
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
山下 敦生 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (50379971)
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研究分担者 |
山下 理 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (20610885)
松本 美志也 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (60243664)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 脊髄虚血保護 / 胸腹部大動脈瘤 / 脳・神経 / 脊髄血流 / 高二酸化炭素血症 |
研究実績の概要 |
2023年度は家兎を用いた脊髄虚血ならびに虚血再灌流前後の脊髄血流量測定・脳脊髄液圧測定技術の開発を行った。2020~2022年度科学研究費(基盤C)「傍脊椎神経ブロックによる側副血行増強に着目した新たな脊髄虚血保護戦略の検討」において脊髄虚血手技と脊髄血流量測定手技は実施可能であるが、これに加えて脳脊髄液圧測定を行う計画としているため、脊髄くも膜下にカテーテルを留置する方法を検討した。脊髄血流量測定用のグラスファイバープローベは第5/6腰椎間から頭側方向に挿入していたが、椎間孔は直径5mm程度であり同じ椎間孔からの挿入は困難であるため、脊髄血流量測定用のグラスファイバープローベを第4/5腰椎間から、脊髄くも膜下カテーテルを第5/6腰椎間から尾側方向への挿入を試みた。適切に脳脊髄液圧が測定できること(カテーテルの先端が壁当たりしないこと)とカテーテルによる馬尾神経損傷がないことに注意し、挿入するカテーテルの長さを検討している。 高二酸化炭素血症の作成においては、麻酔回路の側孔から少量の二酸化炭素を投与する計画であったが、医療ガスメーカーとの相談で、二酸化炭素の微量投与でもかなりの高二酸化炭素血症となり、また流量調整がかなり難しく一定の動脈血二酸化炭素濃度なりにくいことが想定された。したがって40% 酸素に二酸化炭素を混合し、目標としている動脈血二酸化炭素濃度 60 mmHgと80 mmHgとなるような二種類の混合ガスボンベ作成を提案され、現在医療ガスメーカーに混合ガスボンベ作成依頼中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では2023年度中に二酸化炭素ガス供給回路の設置と投与量調整を行い、高二酸化炭素血症の作成を終えている予定であったが、40% 酸素に二酸化炭素を混合する混合ガスボンベ作成への方針変更があったため、次の高二酸化炭素血症下の脊髄血流増加の程度と全身状態への影響への評価実験に至らず、研究の進捗は遅れ気味である。ただしこの高二酸化炭素血症の作成はこの研究の最も重要な部分なので、慎重に進めており、目標としている動脈血二酸化炭素濃度 60 mmHgと80 mmHgとなるような混合ガスボンベの作成が出来れば、その後の実験は比較的スムーズに進行可能と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に検討してきた脊髄血流量測定用のグラスファイバープローベと脊髄くも膜下カテーテル留置位置、留置方法を確立し、動脈血二酸化炭素濃度 60 mmHgと80 mmHgとなるような混合ガスを完成させる。2023年度後半から2024年度前半で予定していた高二酸化炭素血症下の脊髄血流増加の程度とその状況下での循環動態や脳脊髄液圧など全身状態への影響を評価する。すなわち対照群(PaCO2 40 mmHg±2 mmHg)、軽度群(PaCO2 60 mmHg±2 mmHg:許容されるPaCO2)、重度群(PaCO2 80 mmHg±2 mmHg:許容限界のPaCO2)に分け(各n=4)、血圧、心拍数、脊髄血流量、脳脊髄液圧ならびに血液ガス分析にてPaCO2、PaO2、pH、BE、HCO3-、血糖値を測定する。更に脳脊髄液圧をコントロールするために脳脊髄液ドレナージが可能かどうかを評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度後半から進める予定であった高二酸化炭素血症下の脊髄血流増加の程度とその状況下での循環動態や脳脊髄液圧など全身状態への影響を評価実験が施行できなかったため交付された研究費を予定通り使用できなかったが、2024年度に引き続き施行することで未使用額を使用し、遅れを取り戻す予定である。
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