研究課題/領域番号 |
23K08371
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研究機関 | 関西医療大学 |
研究代表者 |
深澤 洋滋 関西医療大学, 保健医療学部, 教授 (70336882)
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研究分担者 |
木口 倫一 和歌山県立医科大学, 薬学部, 准教授 (90433341)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ミクログリア / 掻痒 / ガストリン放出ペプチド / 脊髄 / かゆみ |
研究実績の概要 |
脊髄ミクログリアによる痒み神経調節機構を明らかにするため、イミキモド(IMQ)誘発慢性掻痒モデルマウスの脊髄ミクログリアの動態と掻痒との関連性を検討するとともに、ミクログリア活性化に及ぼす末梢神経活動の影響について検討を行い、以下の諸点を明らかにした。 ①7日間にわたるマウス項部へのIMQの塗布により、ミクログリアが脊髄の頚膨大部および腰膨大部において有意に増加することを明らかにし、このミクログリアの増加に伴いマウスの引っ掻き行動が増加することを確認した。また、ミクログリアマーカーであるIba1, CD11bおよびCD68のmRNA発現レベルを検討したところ4日目にピークを迎えることが明らかとなった。さらに、ミクログリア関連炎症物質でinterferon-regulatory factor 7, toll-like receptor 7, TNF-αおよびCC-chemokine ligand 2 のmRNA発現レベルについても、IMQ塗布群では有意に高いことを明らかにした。 ②マウスの引っ掻き行動の増加に及ぼす末梢神経活動の影響を検討するため、レシニフェラトキシン(RTX)投与によるTRPV1陽性C線維の不活性化を行った。マウス項部へのIMQ7日間塗布により、3日目、7日目ともに引っ掻き行動が増加したが、RTX処置では有意な減弱が認められた。また、脊髄後角ではRTX処置で有意なミクログリアの減少が認められた。以上の結果から、IMQ塗布に伴う引っ掻き行動の増加には末梢神経の活性化が関与すること、IMQ塗布に伴う脊髄後角でのミクログリアの増加に対しても末梢神経の活性化が関与することが明らかとなった。しかし、IMQ塗布部からの神経入力がない腰膨大部でもミクログリアの増加が観察されたことから、全身循環に取り込まれたIMQの影響についても慎重な検討が必要であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脊髄におけるミクログリアの動態と痒みとの関連性を、乾癬モデルとして多用されるIMQ誘発慢性掻痒モデルマウスを用いて検討を行い、痒みの増加と脊髄での活性化ミクログリアの増加の相関性を明確にした。また、RTX処置による末梢神経の不活化により、ミクログリアの活性化には起痒物質による末梢神経の活性化(一次感覚神経入力)の必要性を部分的に示唆することができた。これは、神経における痒み情報伝導路において、脊髄でのミクログリアが痒み情報伝達に対して何らかの伝達調整を担う可能性を示唆するものであり、中枢での痒み神経伝達機構の詳細の解明に寄与するものであるため。
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今後の研究の推進方策 |
上記の成果を踏まえ、今後の推進方策は以下の3点である。 ①慢性掻痒病態モデルマウスにおける引っ掻き行動に及ぼすミクログリの影響についてミクログリアを枯渇させることにより詳細に検討する。 ②慢性掻痒病態モデルマウスにおけるミクログリアで増加する分子の挙動と局在を明らかにし、掻痒におけるその影響を検討する。 ③新規責任因子のGRP-GRPRシステムに及ぼす影響を踏まえた治療戦略を立案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響による学会開催形式の変更に伴う旅費の未消化および行動観察を行う人材が予定通り集まらなかったことによる人件費の未使用による残額である。次年度には消化できる見通しである。
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