研究課題/領域番号 |
23K08391
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
高橋 由香里 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (20613764)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 扁桃体 / 腕傍核 / 活動依存的分子発現 / 痛みの慢性化 |
研究実績の概要 |
慢性の痛みは、“脳内”ネットワークの可塑的な変化によって成立するという見解がこの10年ほどで広く認識されてきた。一方、痛みのネットワークを構成する神経核は、痛み以外にも、体性感覚、内臓感覚、一般的情動などさまざまな機能に関与することが報告されている。これらの背景から、痛みの関わる「神経核同士の形態的結合やシナプス伝達全体」を解析対象とした場合、その中に含まれる痛み以外の機能に関わる神経の分布や活動に痛みで生じる変化が埋もれてしまい、慢性痛の背景となる脳内ネットワークの変化を的確にとらえられない可能性がある。そこで、本研究では、「痛み活性化ニューロン」をそれ以外の機能に関わるニューロンと区別し解析するために、特定の状態で活動したニューロンのみに人工的機能分子を発現させることが可能な「Fos-TRAP法」を用い、脳内の「痛み活性化ニューロン」とその間に形成されるシナプスのシナプス伝達を記録・解析し、慢性痛機構を明らかにすることを目指している。本年度は、痛みの慢性化過程の異なる時点、痛みとそれ以外の刺激における活性化ニューロンの分布を比較検討することを試みた。全脳透明化とライトシート顕微鏡による撮像の条件検討を行い、活性化ニューロンの全脳マッピング、および、特定神経核の活性化ニューロンの軸索投射の立体的撮像が可能となった。しかし、データ取得を進めるに従い、FosTRAP2マウスの脳構造に側脳室拡大が生じている個体が一定数存在していることが判明し、脳を標準化して神経核ごとに活性化ニューロンの発現分布を比較することが困難となった。そのため、FosTRAP2マウスを新たな野生型マウスと交配を繰り返し、現在脳室拡大の問題を解消し、再度実験に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で使用するFosTRAP2マウスに側脳室拡大が生じ、解析対象である扁桃体が吻側に圧縮されるなど脳の構造的が脳地図と異なってしまっていることが判明した。過去に交配を行った野生型マウスからその表現型が導入されてしまった可能性が考えられ、新たなブリーダーから野生型マウスを購入し、交配を繰り返し、脳室拡大表現型のない状態に系統を維持する必要があった。その交配に時間が必要であったため、本動物を用いた実験の進捗が遅れた。現在は脳室拡大のない状態になっており、今後予定していた研究を順次進める。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、FosTRAP2マウスの脳構造の問題が現在は解消されたため、研究計画で予定している、計画1:痛み活性化扁桃体中心核ニューロンの扁桃体局所ネットワークでの機能的位置づけの解析、計画2:痛み活性化ニューロン全脳マッピングを並行して実施し、比較検討事項1:痛みの慢性化過程での痛み活性化ネットワーク活動の変化、比較検討事項2:反復侵害刺激や全身炎症などの因子が痛み活性化ネットワーク活動・痛みの慢性化に与える影響について検討する。特に、今年度計画2の条件検討が大きく進捗したので、今後得られたデータをもとに定量解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度の切り替わりの時期に購入が必要な消耗品の購入のために次年度使用額が生じた。すでに当該消耗品を購入し、使用した。
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