研究課題/領域番号 |
23K08410
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
小野 純一郎 香川大学, 医学部, 協力研究員 (90363217)
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研究分担者 |
坂内 博子 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40332340)
櫻木 繁雄 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (50750105)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 麻酔メカニズム / 1分子動態解析 / 揮発性麻酔薬 / 膜流動性 / シグナル伝達 / 受容体流動性 |
研究実績の概要 |
研究の目的は以下の4項目を挙げた。 Ⅰ. GABAA、AMPA受容体以外にもISOによって動態変化を示す受容体が存在するのか Ⅱ. 揮発性麻酔薬による膜受容体の動態変化がなぜ起こるのか Ⅲ. 受容体の動態変化によってシグナル伝達がどのような影響を受けるのか Ⅳ. GABAA受容体を介する2種類のシナプス電流(Phasic電流とTonic電流)への影響 このうち、2023年度はⅢ、Ⅳについて研究を行った。1mMイソフルランを海馬神経細胞に作用させ、量子ドット1分子イメージング法(QD-SPT)でGABAA受容体の動態を調べたところ、イソフルラン作用後にGABAA受容体の拡散係数が増加し、シナプス内のGABAA受容体数が増加した。これまでにイソフルランはGABAA受容体機能を増強することが知られていたが、我々の研究結果は、それに加えて抑制性シナプス内の受容体の総数を増加させ、phasic電流を増強している可能性が示唆された。さらに、シナプス内のみならず、シナプス外のGABAA受容体もシナプス内と同様に増加していることが分かった。つまり、イソフルランはphasic電流とtonic電流ともに増強することで抑制性シグナル伝達を増強する可能性が示唆された。一方、興奮性神経伝達を担うAMPA受容体のサブユニットの1つであるGluA1およびGluA2の動態も同様にして調べてみた。イソフルラン投与後に興奮性シナプスマーカーであるvGLUT1と共局在するGluA1やGluA2を調べた。GluA1はイソフルラン投与によってシナプス内で減少し、シナプス外で増加した。GluA2はシナプス内外で増加した。GluA2がシナプス内外で増えることと麻酔メカニズムの関連は現在のところ不明である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題で最初に計画した4つの研究のうち、2つについて概ね良好な結果を出すことができた。結果については「研究実績の概要」に記した。この1年間で得られた結果を自己評価すれば、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度以降においては、以下の2点について研究を進めていきたい。 Ⅰ. GABAA、AMPA受容体以外にもISOによって動態変化を示す受容体が存在するのか Ⅱ. 揮発性麻酔薬による膜受容体の動態変化がなぜ起こるのか Ⅰについては、NMDA,ACh受容体の動態変化について調べていきたい。それらの結果とGABAA、AMPAの動態を総合的に考えて麻酔メカニズムにどのような関連性をもつのか調べていきたい。Ⅱについては、細胞膜上の受容体動態を規定するサイトスケルトンとの関連性を調べてみたい。サイトスケルトンにはアクチン、中間系フィラメント、微小管の3種類があるが、それぞれについて調べてみたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進展状況が概ね順調で、追加実験が必要なかったため研究費を節約できた。繰越金は引き続き試薬等の消耗品費を主体として使用する予定である。
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