研究課題/領域番号 |
23K08429
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
沼澤 聡 昭和大学, 薬学部, 教授 (80180686)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | トキシコキネティックス / 薬物中毒 / 中枢毒性 |
研究実績の概要 |
薬物過量曝露時の体内動態は治療量で取得したPharmacokineticパラメータから大きく逸脱するが、その情報は極めて少ない。薬物中毒時の体内動態(Toxicokinetics)や毒性発現の予測 は、中毒治療へ極めて大きな貢献をもたらす。本研究は、臨床中毒例が多い薬物の実験動物 におけるToxicokineticsを臨床中毒学的視点から解析し、患者情報と接続させて薬物中毒の治 療に活用し得る資料を得ることを目的とする。 ベンゾジアゼピンは単剤での毒性は比較的低いことが知られるが、他の向精神薬と併用した過量服用例では死亡例が散見される。特にフルニトラゼパム(FNZ)は日本において広く不眠治療に用いられる一方で、過量服用による死亡リスクの高い薬剤として報告されている。FNZによる死亡例ではクロルプロマジン(CPZ)等の抗精神病薬が併用されていることが多いことから、今年度はFNZを併用することにより、CPZの毒性が変化するかに焦点をあててマウスを用いて検討を行った。FNZはCPZの体温降下作用を延長させ、致死毒性を有意に増加させた。脳内および血中FNZ・CPZのトキシコキネティックス解析より、FNZはCPZ血中T1/2を大幅に延長しAUCを優位に増加させたが、脳内濃度には明らかな影響を示さなかった。一方、FNZの動態にCPZは影響を示さなかった。さらに、FNZはCPZの活性代謝物である7位水酸化体の血中CmaxやAUCを増加させた。以上の結果から、FNZとCPZ併用時にはFNZがCPZの体内動態を変化させ、CPZの毒性を増強して急性薬物中毒死を生じることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の目論見では、ラットを用いてin vivoで薬物遊離型血中濃度をマイクロダイアリシス法により測定する予定であったが、研究協力者が産休・育休に入るなどして、研究計画の変更が必要になった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、改めて当初の研究計画に沿って研究を実施する体制を整備する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画に変更が必要となったため、昨年度の使用額が当初の予定より少なくなった。今年度は改めて当初の研究計画を実施する予定であり、昨年度未使用の研究費を消費する予定である。
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