研究課題/領域番号 |
23K08433
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
久宗 遼 大阪医科薬科大学, 医学部, 助教 (20974900)
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研究分担者 |
山川 一馬 大阪医科薬科大学, 医学部, 准教授 (50597507)
谷口 高平 大阪医科薬科大学, 医学部, 講師 (70779686)
和田 剛志 北海道大学, 医学研究院, 助教 (30455646)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 血管内皮細胞 / グリコカリックス / 敗血症 / 電子顕微鏡 / CyTOF |
研究実績の概要 |
血管内皮グリコカリックスは血管内皮細胞の内腔面を覆っている糖タンパク質や多糖類からなる構造物で、血管内皮細胞とともに血管の恒常性維持に重要な役割を果たしている。血管内皮障害は血管内皮細胞と血管内皮グリコカリックスの障害を指し、いずれの障害でも恒常性の破綻をきたす。敗血症性ショックでは血管内皮細胞障害が生じ、播種性血管内凝固や多臓器障害に発展し、患者のQOL低下や長期的な生命予後の低下を及ぼす。血管内皮グリコカリックスの構成成分を投与することで、敗血症時の血管内皮グリコカリックス障害を緩和することが示されている。 本研究は敗血症モデルマウスを用いて、血管内皮グリコカリックス障害を電子顕微鏡で超微形態学的に評価し、血管内皮細胞障害をCyTOFを用いて網羅的細胞解析を行う。上記方法により血管内皮障害の修復について検証する。 初年度では敗血症モデルマウスの8週齢の雄マウスを用いて、腎臓・肝臓・肺・心臓・腸管において透過型電子顕微鏡で超微形態学的解析を行った。敗血症超急性期においては血管内皮グリコカリックスの菲薄化や途絶を確認することができた。また、敗血症数週間経過後では、透過型電子顕微鏡でグリコカリックスの修復と思われるグリコカリックスの肥厚を認めることができたのみで、詳細な解析には至っていない。 今後は走査型電子顕微鏡での中長期的な変化に関する超微形態学的評価及びグリコカリックス構成成分の投与による修復過程に与える影響の評価、その際の血管内皮細胞の細胞解析を行う。これら、形態学的解析と細胞解析を組み合わせて行うことで、敗血症時における血管内皮細胞障害の修復過程の解明と次なる治療戦略構築を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は敗血症モデルマウスを盲腸結紮穿刺(CLP)で作成し、グリコカリックスの経時的変化を電子顕微鏡で観察する予定であった。CLPマウスの生存率を一定に保つことに難渋したが、穿刺孔の個数や大きさを調整することで初年度後半には概ね生存率を安定化させることに成功した。次に電子顕微鏡観察では、グリコカリックスの観察のために還流固定をおこない臓器を摘出し観察標本を作製する。透過型電子顕微鏡観察のための標本作成の段階で超薄切片として観察を行うが、専門的手技を要すためその習熟に時間を要した。 年度末には透過型電子顕微鏡での観察を行うことができたが、走査型電子顕微鏡での観察までには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
透過型および走査型電子顕微鏡観察について専門的技術および知識を要するため、電子顕微鏡に精通した研究分担者を追加することで、電子顕微鏡観察および分析の検討を進めていく。また、修復過程について電子顕微鏡のみでなく、グリコカリックスにおける蛍光発現パターンを免疫組織学的に確認し、発現量および発現局在についても検討を行う。薬物投与の比較検討を行うことで血管内皮グリコカリックスの超微形態学的解析と関係についても検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は盲腸結紮穿刺モデルの生存率の安定化に難渋かつ、透過型電子顕微鏡の標本および評価系を確立するのに時間を要したため、走査型電子顕微鏡の標本および評価系の確立を行うことができなかった。そのため、走査型電子顕微鏡にかかわる費用が次年度に生じた。次年度は電子顕微鏡に関する専門知識を有する研究者を共同研究者に迎えたため、電子顕微鏡での超微形態学的評価を進めていく予定である。
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