研究課題
本年度はTMRセンサーを用いた磁場計測並びに評価を行う環境整備を行い、対象者をリクルートし記録を開始した。本研究を効率よく実施するための事前検討として、体性感覚刺激や聴覚刺激など様々な刺激とそれを最適に記録するセンサー位置の探索を行っている。同時に本センサーの臨床応用を見据えて、てんかん症候群の一つである扁桃体腫大を呈する内側側頭葉てんかんにおける脳磁図所見の特徴を検討した。本検討では21名の扁桃体腫大を呈する内側側頭葉てんかん患者を対象とし、これを1)扁桃体腫大のみを呈する群(AE群)(N=10)と2)扁桃体腫大に加えて何らかの病変を呈する群(AE+群)(N=11)に分けた。対象者は頭皮上脳波を装着した状態で、覚醒睡眠を含む1時間以上の自発活動を脳磁図で記録した(脳波と脳磁図は同時記録されている)。てんかん専門医または専門資格を持つ臨床検査技師が、視覚的に抽出した複数のてんかん性活動を等価電流双極子法をもちいてダイポールとして一点近似させ、その棘波信号源を各患者の頭部画像(MRI)上に反映させた。81%の患者(N=17)において棘波信号源は側頭葉前方内側に推定された。棘波信号源が前方に局在し、かつ水平または垂直型を呈した患者は、AE群では70%(N=7)に上ったのに対しAE+群では18%(N=2)にとどまった(p<0.01)。本研究により、均質な症例群とみなされやすい扁桃体腫大を呈する内側側頭葉てんかんも、皮質病変が脳内ネットワークに何らかの影響を与えていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
上記に示すように、研究課題推進に必要なTMRセンサーの基礎データ収集と、従来型脳磁計を活用したてんかん研究が実施できており、研究は順調に進捗しているといえる。
2023年度研究で得られた知見を踏まえ、TMRセンサーによる対象者の脳活動の評価を本格化させる。また本年度同様、従来型脳磁図を活用した研究も適宜実施することで、課題研究のさらなる推進を図りたい。
研究自体は順調に進捗しているが、研究に使用するTMRセンサー等の導入調整により当初の予定された金額が使用されなかった。来年度以降も本研究は継続されるため、そこで使用される予定である。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
J Jpn Biomag
巻: 36 ページ: 158-159.