研究課題/領域番号 |
23K08441
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
北川 良憲 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (40595154)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 熱傷 / 筋萎縮 / 中枢神経障害 / 炎症 |
研究実績の概要 |
重症熱傷は全身の諸臓器に重篤な障害を来して時に致命的となるが、救命できた場合であっても遷延する筋萎縮は長期予後に影響を与える病態である。重症熱傷後の筋萎縮は、一般的には筋細胞の変性や脳や脊髄など中枢神経の障害によって惹起されると考えられているものの、その成因や進展機構については十分に解明されているとは言い難い。 ミオカインは筋収縮に伴い骨格筋から放出されるサイトカインであるが、代謝調節や抗炎症作用、損傷再生時の骨格筋量の調節など多様な役割を担っている。しかし、重症熱傷の病態においては、ミオカインが中枢神経をはじめとする他の臓器に及ぼす影響については知見が乏しい。本研究では、マウス重症熱傷モデルを作成して、ミオカインが熱傷後の中枢神経に及ぼす影響を解析し、神経での炎症を修飾することによって重症熱傷後の筋萎縮を軽減させることを目的とする。 ミオカインのひとつであるミオスタチンは、筋芽細胞の増殖あるいは分化のプロセスを抑制することで筋肥大方向への調節を行い、過度の骨格筋発達を抑制している。ミオスタチン作用の欠失は、結果として過剰な筋肥大を生じ、ミオスタチン関連筋肉肥大症として知られている。こうした背景から、本研究では数あるミオカインのなかでもミオスタチンに注目し、熱傷後の筋萎縮とミオスタチンとの関連について解析した。 研究初年度である令和5年度は、マウス重症熱傷モデルを用いた検討を実施した。熱傷受傷時の体重を揃えた野生型マウスとミオスタチン欠失マウスを用いて検討した結果、オスタチン欠失マウスでは野生型と比較して受傷2週間後の前脛骨筋の重量が有意に高値であった。また、脊髄でのTNF-αやIL-1βの発現をqPCRによって比較したところ、ミオスタチン欠失マウスでは野生型マウスと比較して炎症性サイトカインの発現が抑制されていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス熱傷モデルを用いた検討を行い、熱傷後の筋萎縮は当初の計画通りに実施できた。その中で重症熱傷後の筋萎縮においてミオスタチンが関連していることを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、培養細胞レベルでのLPS、活性化酸素種(Reactive Oxygen Species:ROS)によるミクログリアの活性化、ミオスタチンの発現の評価を行う。ミクログリアの活性化の指標としては免疫染色による形態評価、炎症性サイトカインの産生、ROSや一酸化窒素(nitric oxide:NO)の産生を評価する。また、ミオスタチンのほかに、xCTやNrf2など酸化応答分子とグルタミン酸調節機構の関連性の評価についても進める。
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