研究課題
重篤な呼吸不全に対して体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation: ECMO)による呼吸補助が幅広く行われるようになってきている。近代的な集中治療室において、ECMOの導入にはさほど困難はない。しかし、出血・血栓症や 感染症など続発する合併症で致死的経過をたどることも多く、これらの合併症を制御することがECMO管理を成功させる鍵となる。この一方で、ECMO管理下における最適な血液凝固モニタリング手法や、早期に感染症を認知できる堅牢な指標についてのエビデンスは不足している。本研究では血液粘弾性検査(thromboelastgraphy: TEG)および凝固波形解析(clot waveform analysis: CWA)と、細菌・真菌の網羅的検出が可能な全血PCR法を用いた感染症遺伝子検査(以下、全血PCR法)を同時に行うことで、TEGやCWAの変化が感染症早期診断のマーカーとなり得るか検証を行っている。2023年度は主として臨床例からの検討を行い下記の結果を得た。1)ECMO管理下におけるTEGとCWAの関係性:特殊な溶血性疾患であっても同検査が有用であることを示し、従来のモニタリングよりもより鋭敏に血液凝固状態を反映できる可能性を示した。2)特殊な易出血性疾患に対するTEGの有用性:血友病などの出血性疾患に対してTEGが有用である可能性を示した。また、同時にCWAとの関係性について言及した。3) 感染症の側面から検討を進めて、TEG結果と感染症の関係:TEGにより異常所見が出現すると予後が悪化する可能性について示した。特に、播種性血管内凝固を合併している症例では、予後を鋭敏に反映する可能性について言及した。
2: おおむね順調に進展している
症例が順調に集まり、予定通り進んでいる。
2024年度はさらに症例を集めるとともに、2023年度で得られた結果から示唆された、血液粘弾性検査(TEG)と感染症予後の関係についてさらに検討を進める予定である。
参加する予定の学会がハイブリッド開催となり、予定していた旅費が抑えられたが、円安の影響もあり物品費の支出が増加した。その他支出を調整することで、概ね予定していた額の使用となったが、来年度は成果を海外学会で発表するため、未使用額を旅費に追加して計上する予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Internal Medicine
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