研究課題/領域番号 |
23K08475
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今村 行雄 京都大学, 工学研究科, 研究員 (90447954)
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研究分担者 |
村上 由希 関西医科大学, 医学部, 講師 (50580106)
松本 寿健 大阪大学, 医学部附属病院, 特任助教(常勤) (70644003)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | 敗血症脳症 |
研究実績の概要 |
敗血症は重篤な全身性感染症であり、その合併症として脳に重大な障害を及ぼす「敗血症性脳症」を引き起こすことがあります。この脳症は意識障害や精神症状、運動障害など様々な神経学的異常をもたらし、患者の回復を大きく阻害する要因となっています。しかし、その発症メカニズムの詳細は不明な点が多く、有効な治療法の開発が遅れがちでした。そこで私たちは、この重要な課題に取り組むべく研究を開始しました。マウスを用いてモデル動物を作製し、敗血症時の脳の変化を徹底的に解析しました。脳内の炎症経路を制御できる系を構築し、それらが脳症の発症にどう関わるかを詳細に観察しました。その結果、ある種の抗炎症性の脳神経細胞を活性化させると、敗血症による意識障害などの症状が顕著に改善されることが明らかとなりました。この発見は、抗菌薬による感染症治療に加え、新たな神経保護的アプローチで脳症の発症そのものを予防できる可能性を示唆するものです。長年にわたり解決の目処が立たなかった敗血症性脳症に対し、今回の知見は画期的な治療法開発への足がかりを与えてくれました。研究成果を権威あるジャーナルに発表したところ、丁寧な実験デザインと重要な発見が高く評価され、世界中から多くの反響を呼びました。しかし、これはあくまで一つの発端に過ぎません。今後は、この知見を足がかりとして、より広範な研究、特に症状の分子機構の解明や新規治療薬種の探索などに取り組む必要があります。遺伝子発現解析、タンパク質解析、など、様々な研究手法を動員しながら、包括的な治療法の確立に向けた研鑽を重ねていきたいと考えております。最終的な目標は、敗血症性脳症という難治性の神経合併症を克服し、感染症患者の神経学的予後を大幅に改善することにあります。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、炎症制御物質(サイトカインやアセチルコリン受容体など)をラベル化し、敗血症性脳症を持つマウスモデルを用いてイメージングで検出します。研究計画における実験は順調に進行中です。主な実験手法の多くはまだ始まっていませんが、研究の初期段階で重要な基礎データを収集することができました。また、敗血症性脳症における抗炎症経路の活性化に焦点を当てた研究論文を成功裏に発表し、学会でのプレゼンテーションを通じて有益なフィードバックを受け取ることができました。これらの成果はプロジェクトの進捗において大きなステップとなっており、全体的なプロジェクトの進行は順調です。 今後は、実験の実施に向けて体制を強化する予定です。学会で得られたフィードバックを活用し、さらに研究手法を精緻化することで、敗血症性脳症の病態理解を深めることが期待されます。これにより、最終的な目標である炎症の制御メカニズムの解明に向けた効果的な進捗が期待できます。
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今後の研究の推進方策 |
敗血症性脳症の病態解明と新規治療法の開発を目指した本研究は、順調な滑り出しを切ることができました。まずマウスモデルの構築が予定通り進み、脳内の炎症経路を制御できる実験系を整備することに成功しました。この系を用いた詳細な解析により、特定の神経細胞の活性化が敗血症による意識障害などの症状を改善することが明らかとなり、画期的な発見を得ることができました。この知見は世界で初めてであり、権威あるジャーナルへの論文掲載に伴い、国内外から高い評価を受けています。既に複数の研究機関から共同研究の打診があり、さらなる研究推進への弾みとなっています。現在は、この成果を足掛かりとして、分子メカニズムの解明と新規治療薬種の同定に取り組んでいます。遺伝子発現解析やタンパク質解析などの実験は順調に進行中です。 このように本研究は当初の期待通りのペースで進行しています。敗血症性脳症に対する包括的な治療法の確立に向けて、一層の研究推進を図っていく所存です。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究費が予定通りに消費されなかった理由には、COVID-19のパンデミック以外にもいくつかの要因が関与していました。主な理由を以下に詳述します。まず、人員の変動が大きな影響を及ぼしました。人手不足は特に技術的な操作が必要な実験の遅延を招き、これが研究費の使用減少につながりました。次に、実験の進捗に伴う課題もありました。予定された実験の一部が想定以上に早く結果を出したため、追加の実験を行う必要がなくなった一方で、予期しない問題が発生した実験もあり、再計画が必要となりました。これらの変動により、特定の材料や設備の購入が予定よりも少なくなってしまいました。また、予算計画と資金配分の調整の問題も生じました。これにより、予算の一部が未使用のまま残ってしまいました。規制や許可の遅延も研究進行に影響を与えました。生物学的な実験に必要な規制の承認や安全許可が予定より遅れ、関連する実験がスケジュール通りに進まず、計画された費用が次年度に持ち越されてしまいました。これらの事情を踏まえ、次年度に向けてはこれらの未使用の研究費を効果的に活用し、研究の遅れを取り戻すための具体的な計画を策定しています。これには、人員の再配置、実験計画の見直し、必要な許可の迅速な取得を優先事項として進めることが含まれます。この対策により、研究の質と速度を向上させ、次年度の研究成果を最大化することを目指しています。
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