研究課題/領域番号 |
23K08529
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
深井 順也 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (50543774)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | グリオーマ / ヒストン / 臨床 / 病理 / 脳腫瘍 / WHO分類 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ヒストン変異を有するグリオーマの病理・病態をあきらかにすることである。 関西ネットワークに登録された全118症例を収集・解析して、臨床腫瘍学的および組織・分子病理学的特徴を解析中である。1.臨床情報として年齢・性別・治療内容などをエクセルフォームで収集し、統計解析ソフト(JMP Pro14)を用いて臨床学的特徴を分析している。2.術前MR画像を収集し、6人で読影した結果を集計、検討して、登録症例の画像上の特徴(とくに病変の局在および進展範囲)を確定した。3.臨床情報として手術・再発・死亡日を収集し、種々の臨床・放射線・病理学的特徴に従った生存解析を行い、生存期間との相関を統計学的に解析している。4.手術病理標本を収集し、中央診断体制(大阪国際がんセンター)において検討して、病理組織診断を確定した。5.グリオーマ細胞のトリメチル化状態(欠失)を免疫染色で検証するため、手術摘出組織のホルマリン固定パラフィン包埋組織の薄切標本を作製したのち、市販の一次抗体で免疫組織化学的に染色する準備を進めている(株式会社日本医学臨床検査研究所)。6. IDH、TERT、MGMT 遺伝子に加えて、EGFR, FGFR1, BRAF などの遺伝子変異の頻度を解析している(大阪医療センター・臨床研究センター)。7.非典型的な腫瘍局在を有する症例(一部)を、イルミナ社のInfinium Methylation EPICアレイを用いて腫瘍組織におけるDNAメチル化解析を行った(和研薬およびレリクサ株式会社)。ドイツの研究グループ(DKFZ)が提供している脳腫瘍DNAメチル化分類で照合し、DMG や DHGとの相違を検討している。 現在のWHO脳腫瘍分類に言及がない新知見を創出し、より正確な腫瘍実態を把握および疾患概念を確立する情報基盤になり、新WHO分類に反映される可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画および進捗状況は、具体的には以下に要約できる。 【臨床学的解析】1.臨床情報を収集、統計解析して、臨床学的特徴を明らかにする(進行中)2.術前MR画像を収集、読影して、腫瘍局在を確定し放射線学的特徴を明らかにする(進行中)3.臨床・放射線・病理学的特徴に従って生存解析し、生命予後との相関を明らかにする(進行中) 【病理学的解析】4.手術病理標本を収集、検鏡して、中央病理組織診断を確定する(実施済み)5.手術病理標本を免疫染色(p.K28me3/K27me3)して、ヒストンメチル化消失を確認する(準備中)6.ヒストン変異以外に併存する遺伝子変異(EGFR, FGFR1, BRAFなど)を解析する(進行中)7.ゲノムワイドDNAメチル化プロファイリングに基づき、脳腫瘍分類(DKFZ分類)する(進行中) 以上から、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画はおおむね順調に進展している。今後も引き続き、以下の計画通りに推進する。 関西ネットワークに登録された全118症例の臨床腫瘍学的および組織・分子病理学的特徴を解析する。 【臨床学的解析】1.臨床情報として年齢・性別・治療内容などついて、統計解析ソフト(JMP Pro14)を用いて臨床学的特徴を分析する。2.登録症例の画像上の特徴(とくに病変の局在および進展範囲)を分析する。3.種々の臨床・放射線・病理学的特徴に従った生存解析を行い、生存期間との相関を統計学的に解析する。 【病理学的解析】4.手術病理標本を検討して、病理組織学的特徴を解析する。5.グリオーマ細胞のトリメチル化状態(欠失)を免疫染色で検証するため、手術摘出組織のホルマリン固定パラフィン包埋組織の薄切標本を作製したのち、市販の一次抗体で免疫組織化学的に染色する(株式会社日本医学臨床検査研究所)。6. IDH、TERT、MGMT 遺伝子に加えて、EGFR, FGFR1, BRAF などの遺伝子変異の頻度などの特徴を解析する。7.非典型的な腫瘍局在を有する症例を、イルミナ社のInfinium Methylation EPICアレイを用いて腫瘍組織におけるDNAメチル化解析を行い(和研薬およびレリクサ株式会社)。ドイツの研究グループ(DKFZ)が提供している脳腫瘍DNAメチル化分類で照合し、DMG や DHGとの相違を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題は、研究代表者が以前より実施してきた研究を継続、発展させる内容であり、本年度はすでに収集済みの情報を整理、解析する作業に従事することとした。本研究計画はおおむね順調に進展しており、研究成果を創出できているが、当初に計画していた追加症例の解析などを次年度以降に実施する計画に変更したことから、本年度の研究助成金を満額使用することなく、次年度に使用する計画とした。具体的には、データ収集、サンプル解析(遺伝子変異解析、外注による免疫組織化学的解析、DNAメチル化アレイ解析など)、論文執筆・投稿・出版、旅費などに使用する予定である。
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