研究実績の概要 |
令和5年度は主に三次元形態及び三次元血流の定量化を可能とするパラメーターの開発を行った。3-matic 8.0 (Materialise Japan, Yokohama, Japan)と呼ばれるソフトで頚動脈分岐部の理想モデル、頚動脈狭窄症モデル、蛇行を伴う複雑な形状の頚動脈狭窄症モデルを作成し、各モデルの頚動脈狭窄部あるいはそれに準じる部位における三次元形態及び血流速度の三次元流線を可視化した。まず、総頚動脈、外頚動脈、内頚動脈の血管内腔の中心部を連続的に結ぶ線を引き、任意の点間の曲線距離と直線距離を測定し、その比率を簡易的に血管蛇行率とした。また頚動脈分岐角度及び捻れを総頚動脈の走行を基準に三次元的に数値化した指標を作成した。複雑な三次元血流の定量化を可能とする新しいパラメーターとして暫定的に、時間依存性のゆらぎ Oscillatory Velocity Index (OVI)、ベクトルに沿った速度勾配 Flow Velocity Gradient (FVG)、速度勾配ベクトルの時間依存性ゆらぎ Fluctuation FVG index (FFI)の計算式を作成した。これらの新しいパラメーターが血管走行の複雑性やそれに伴う血流の複雑性を定量可能か、より形態が複雑な頚動脈狭窄症モデルで検証・改良した。さらに、これらの新規パラメーターが頚動脈狭窄症の進行や脳梗塞発症リスクと相関するか、また従来のパラメーターよりその点に関し優れているか、現在までに蓄積した頚動脈狭窄症データベースで後方視的に比較検討した。その結果、BMIが25以上の群や随時血中中性脂肪値が175 mg/dl以上の群で頚部内頚動脈の血管蛇行率が有意に高く、診察時血圧が140 mmHg以上の群で頚部外頚動脈の血管蛇行率が有意に高いことが明らかになった。
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