研究課題/領域番号 |
23K08572
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
植川 顕 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (40448535)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 悪性神経膠腫 / 腫瘍微小環境 / 脳境界マクロファージ / 腫瘍血管新生 / 腫瘍免疫 / アミロイドβ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、悪性神経膠腫の増殖・浸潤・血管新生において、腫瘍と血管、免疫細胞(マクロファージ、リンパ球など)の相互作用を解明し、臨床応用により新たな治療戦略を確立することである。悪性神経膠腫は高齢者に発症し、アルツハイマー病をはじめとした認知症の病態背景に関連し (Med Hypotheses. 2010)、腫瘍内に蓄積したアミロイドβが治療標的となる可能性が報告されている(Int J Mol Sci. 2019、Clin Exp Immunol. 2020)。 これまでの研究で、脳血管周囲マクロファージがCD36/NADPH oxidase経路により活性酸素種を産生し脳血管反応性を障害し認知機能を低下させ、アミロイドβの蓄積を促進させることを報告している(Uekawa, Mol Neurodegener. 2023)が、この経路が血管新生・免疫機序を介して悪性神経膠腫の増大・浸潤に影響を与えている可能性がある。また、同経路が悪性神経膠腫の腫瘍細胞に対し殺細胞作用を示す可能性が示唆される。 本研究では、悪性神経膠腫患者から採取した腫瘍組織検体を免疫染色し、共焦点顕微鏡で腫瘍本体と腫瘍周辺の腫瘍細胞の浸潤、血管構築と免疫細胞について評価し、VEGFをはじめとした血管新生に関わる蛋白、腫瘍内・脳実質(老人班)・血管(アミロイド血管症)のアミロイドβ蓄積などの脳内環境要因の評価を行っている。また、腫瘍細胞培養により血管増殖因子・サイトカインの発現を評価し、マウス脳内腫瘍移植モデルで腫瘍の増大・抑制機序や脳血流計で脳血管反応性評価を行っている。 この研究によって悪性神経膠腫の増大・浸潤機序が明らかになり、化学放射線療法に耐性例に対する新治療法確立の基盤となることが期待される。また、上記の手法を下垂体腺腫や髄膜腫、転移性脳腫瘍などの脳腫瘍にも応用し研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者の脳腫瘍組織サンプルを用いた組織学的検討するために、悪性神経膠腫患者から採取した腫瘍組織検体を用いて、免疫染色により脳血管周囲マクロファージが脳腫瘍細胞の増殖・浸潤にどのように関わっているか関連を評価している。当教室ですでに蓄積されている悪性神経膠腫のサンプルと臨床情報に加え、今後の手術例から採取されるサンプルも使用して評価を行っており、おおむね順調に評価を行っている。 染色について、免疫細胞はミクログリア(Iba1抗体)、脳常在性マクロファージ(CD206体)、単球・未熟マクロファージ(ED1;CD68抗体)、腫瘍関連性M2マクロファージ(CD163抗体)の染色評価を行っており、当院の細胞病理学講座と共同で研究を進めている。共焦点顕微鏡を用いて患者の脳組織サンプルから腫瘍周囲の微小血管と腫瘍内の造成血管の構造変化や、VEGFをはじめとした血管新生に関わる蛋白の染色評価を行っている。おおむね良好な染色結果を得ている。 また、マウス脳内腫瘍移植モデルや腫瘍細胞の培養により、サンプルや検査キットの準備を行いVEGF、IL-6 、MMP-9 、TNFαなどの血管増殖因子・サイトカインの発現をELISAや定量PCRで評価を行っており、マウス脳内腫瘍移植モデルや腫瘍細胞の培養の方法・条件の検討を行っている。さらに、腫瘍内+脳実質(老人班)+血管(アミロイド血管症)のアミロイドβ蓄積などの脳内環境要因の評価を行っている。マウス脳内腫瘍移植モデルで腫瘍の増大・抑制機序を検討し、レーザースペックル脳血流計で脳血管反応性評価を行っている。 また、上記の手法を下垂体腺腫や髄膜腫、転移性脳腫瘍などの脳腫瘍にも応用し研究を進めている。 おおむね順調に研究が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
悪性神経膠腫の摘出腫瘍サンプルの腫瘍本体と腫瘍周辺の浸潤部組織を用い、腫瘍細胞の浸潤、血管構築と免疫細胞について評価を行い、免疫細胞はミクログリア(Iba1抗体)、脳常在性マクロファージ(CD206体)、単球・未熟マクロファージ(ED1;CD68抗体)、腫瘍関連性M2マクロファージ(CD163抗体)を染色評価してている。さらにT細胞リンパ球の相互作用についても評価・検討を行う。抗体によって染色性を向上させるため染色条件を調整する。共焦点顕微鏡を用いて患者の脳組織サンプルから腫瘍周囲の微小血管と腫瘍内の造成血管の構造変化や、VEGFをはじめとした血管新生に関わる蛋白の染色評価を行っている。当院の細胞病理学講座と共同で研究を進めている。組織微小環境における空間解析も含め、今後さらに染色条件などについて検討を行っていく。 また、マウス脳内腫瘍移植モデルや腫瘍細胞の培養の方法・条件の調整を行う。 これまでの研究で、脳血管周囲マクロファージは免疫受容体CD36を介してCD36/NADPH oxidase経路により活性酸素種を産生し、悪性神経膠腫の腫瘍細胞に対し殺細胞作用を示す可能性が考えられており、実験で検証中である。 腫瘍内+脳実質(老人班)+血管(アミロイド血管症)のアミロイドβ蓄積などの脳内環境要因の評価を行っている。マウス脳内腫瘍移植モデルで腫瘍の増大・抑制機序を検討し、レーザースペックル脳血流計で脳血管反応性評価を行っている。アミロイドβを治療標的にする方針を検討している。 上記の解析結果に基づいて、患者の臨床経過から従来の化学療法・放射線療法に耐性を示す患者群について詳しく検討を行い、治療抵抗性の機序を明らかにする。さらには、治療抵抗性を克服する治療法を確立する。 また、上記の手法を下垂体腺腫や髄膜腫、転移性脳腫瘍などの脳腫瘍にも応用し研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の計画に従い、臨床サンプルや動物実験の検体を用いた免疫組織染色、ELISAなどの分子生物学的解析を行っており、次年度にも継続して行う。物品・実験器具は教室で共有の資材・道具を使用しているものを含むが、必要分を本研究費から使用している。そのため、今後も本研究を行うのに必要な抗体、動物、試薬、研究キットなどを購入する必要がある。また、研究結果を学会発表、論文報告するために本研究費を使用する。
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