研究課題/領域番号 |
23K08576
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
赤川 浩之 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (60398807)
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研究分担者 |
茂木 陽介 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (30649405) [辞退]
恩田 英明 東京女子医科大学, 医学部, 非常勤講師 (60185692)
新井 直幸 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (70868736)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 特発性頚部内頚動脈攣縮症 / 遺伝性疾患 |
研究実績の概要 |
特発性頚部内頚動脈攣縮症は、頭蓋外内頚動脈の攣縮により一過性脳虚血発作や脳梗塞を生じる疾患で、これまで少数の症例報告があるのみで、原因や治療法は不明である。冠血管攣縮を合併したり、片麻痺性片頭痛と診断されている場合もある。これまで遺伝性疾患として認知されていなかったが、家族性発症例を経験したことから次世代シーケンシングによる網羅的遺伝子解析を行ったところ、血管平滑筋の弛緩・増殖抑制因子プロスタサイクリン(PGI2)の合成酵素をコードするPTGIS遺伝子の両アリルの機能喪失型変異が検出された。すなわち、新規の常染色体潜性遺伝性疾患であることが判明したわけである。 これまで、PTGIS遺伝子の片アリルの機能喪失型変異は本態性高血圧症や肺動脈性肺高血圧症と関連することが報告されていたため、様々な動脈性疾患におけるPTGIS遺伝子の関連も調査した。その結果、ウィリアムズ症候群に合併する末梢性肺動脈狭窄症の重症化要因として本遺伝子の機能喪失型変異が重要な役割を果たしていることも見出し、共同で論文報告を行った(J Am Heart Assoc. 2024、DOI: 10.1161/JAHA.123.032872)。 また、本年度は当該遺伝子のノックアウト・ラットの作出へ向けた準備と並行し、作出後に機能解析実験へシームレスに移行できるよう、培養細胞株を用いた機能解析法の整備も行った。前出の末梢性肺動脈狭窄症の研究では罹患部位であるヒト肺動脈内皮細胞・平滑筋細胞を用いて機能解析が実施されたが、本研究ではヒト頚動脈由来の血管内皮細胞と平滑筋細胞株を用いて検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属研究施設の建て替えに伴う移転作業が当初の想定を超えて労力を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
モデル動物作出と並行して、培養細胞での遺伝子変異の実験系を確立する。細胞株として罹患部位である頸動脈内皮細胞と平滑筋細胞を用いる。患者から検出された変異を有するPTGIS発現ベクターで強制発現実験を行い、プロスタサイクリン合成能や細胞増殖能の差異を測定する。さらに、本疾患の病態は異常血管攣縮であるため、このメカニズムを理解するためには血管平滑筋細胞を用いた機能解析法の確立が重要である。血管平滑筋細胞は増殖型と分化収縮型の表現型を互いに移行することが知られているので、まず、分化収縮型に特異的な遺伝子発現プロファイルを明らかにする。RNA-seq解析によりこれを実施する。ついで、PTGISをノックダウンあるいはノックアウトした頸動脈平滑筋細胞を用い、コラーゲンマトリクスによる細胞収縮アッセイや分化収縮に関連する遺伝子発現の変化を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属研究所の建設、移転に伴い、研究計画にやや遅れが生じたため。研究計画調書および前出の今後の研究の推進方針に則り、動物および培養細胞を用いた機能解析実験を進めていく計画である。そのための受託費用や試薬購入に額をあてる。
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