研究課題/領域番号 |
23K08597
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
遊道 和雄 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 教授 (60272928)
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研究分担者 |
藤井 亮爾 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 准教授 (10333535)
唐澤 里江 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 准教授 (50434410)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 変形性関節症 / 軟骨細胞 / 細胞エネルギー代謝 / 力学的ストレス |
研究実績の概要 |
肥満、過荷重や関節のoveruseによる関節への過度の力学的ストレスは、軟骨細胞の活性低下、軟骨コラーゲンなど基質の変性・破壊、軟骨下骨層の変性および関節機能障害を惹起し、変形性関節症(osteoarthritis, OA)の病因病態に関与すると考えられている。しかし、軟骨細胞が力学的ストレスをどのように感受して応答するか(ストレス感受・応答因子)、病的・過剰な力学的 ストレスに対して防御反応・機構はあるのか、さらに力学的ストレス感受・応答機構と軟骨変性機序との関連には未だ解明すべき点が多く、これらの解明を進めている。 本年度は、第一に生理的力学ストレスの感受・応答因子として、細胞エネルギー調節因子(グルコール輸送体 ・ エネルギーセンサー)の重要性を解析し、これらを介するDNA損傷修復酵素活性の調整と軟骨変性との関連を解析した。次に、生理的レベル、過剰・病的なレベルの力学的ストレスに応答する軟骨細胞DNA損傷、DNA損傷修復酵素 (APEX2, Ogg1) 活性変化、DNA修復酵素活性を調整するエネルギー代謝 調節因子活性を比較し、様々なレベルの力学的ストレスに対する感受・応答の分子機序を詳解した。 今後も計画どおり、生理的レベルと過剰・病的レベルの力学的ストレスに対する軟骨細胞の応答の違いを解析し、ストレス応答・防御反応と、軟骨変性機序との関連の解明を進めて、治療法開発の糸口を得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究成果から、力学的ストレスの負荷によって、軟骨細胞膜上のグルコース輸送体 (Glut-1)の発現は増強され、このGlut-1を介したグルコース取り込み、ATP産生が一過性に亢進し、その過程でミトコンドリア・電子伝達系の作用が亢進、過剰の活性酸素種が産生されて漏出、これがDNA損傷と軟骨基質の変性を引き起こす、一方細胞内へのグルコース取込み・ATP産生の亢進に伴い、エネルギーセンサー AMPK - Sirt‐1活性は低下し、その結果、Sirt-1が負に制御する肥大軟骨化・軟骨異化因子Runx2の活性が相対的に増強して、軟骨変性・骨棘形成を惹起すること、また、Sirt‐1活性低下がDNA損傷修復酵素(Ogg1, APEX 2)の活性低下を誘導し、DNA損傷の残存と細胞活性低下につながること示す結果がえられた。 これらの成果から、力学的ストレスによる「DNA損傷の機序」および「細胞エネルギー調節因子によるDNA修復酵素・Runx2の活性変化」と軟骨変性との関与についての我々の仮説を裏付ける結果が得られたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、生理的レベル、過剰・病的なレベルの力学的ストレスに応答する軟骨細胞DNA損傷、DNA損傷修復酵素 (APEX2, Ogg1) 活性変化、DNA修復酵素活性を調整するエネルギー代謝 調節因子活性を比較し、様々なレベルの力学的ストレスに対する感受・応答の分子機序を詳解する。その結果を基に、DNA修復酵素活性を調整するエネルギー代謝調節因子(Glut1, Sirt-1, AMPK)の発現を抑制または過剰発現させた軟骨細胞を樹立し、生理的レベル、過剰・病的なレベルの力学的ストレスに応答するエネルギー代謝調節の防御機構を比較検討する。さらに、得られた結果をもとに、実験的OAモデルで上記調節因子の阻害剤・誘導剤の軟骨変性抑制効果を検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
生理的レベル、過剰・病的なレベルの力学的ストレスに応答する軟骨細胞DNA損傷、DNA損傷修復酵素 (APEX2, Ogg1) 活性変化、DNA修復酵素活性を調整するエネルギー代謝 調節因子活性を比較し、様々なレベルの力学的ストレスに対する感受・応答の分子機序の解明を勧めていく計画である。そのために、新たな実験系として、DNA修復酵素活性を調整するエネルギー代謝調節因子(Glut1, Sirt-1, AMPK)の発現を抑制または過剰発現させた軟骨細胞を樹立し、生理的レベル、過剰・病的なレベルの力学的ストレスに応答するエネルギー代謝調節の防御機構を比較検討する必要があり、翌年度の請求助成金と合算して計画を進めていく予定となった。さらに、これまでに得られた結果をもとに、実験的OAモデルで上記調節因子の阻害剤・誘導剤の軟骨変性抑制効果を検証していく必要があり、次年度の使用助成金が生じた。
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