研究課題/領域番号 |
23K08632
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
國定 俊之 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (80346428)
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研究分担者 |
中田 英二 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (10649304)
藤原 智洋 岡山大学, 大学病院, 講師 (80639211)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 融合遺伝子 / がん遺伝子パネル / 肉腫 |
研究実績の概要 |
2019年から2023年までに岡山大学病院でがん遺伝子パネル検査を行った肉腫例107例について診断への影響、genotype-matched therapy を受けた症例の割合、生殖細胞系列由来が疑われる病的バリアント(presumed germline pathogenic variants (PGPVs))が検出される症例の割合について検討した。組織型は脱分化型脂肪肉腫12例、子宮平滑筋肉腫16例、骨肉腫10例等であった。検出された病的バリアントは、多い順にTP53、ATRX、PIK3CA等であった。がん遺伝子パネル検査の結果に基づく診断変更は3例 (3%)に認められ、いずれも特異的な融合遺伝子が同定され、治療に結びついた。がん遺伝子パネルで47例( 44% )に治療薬の選択肢が提示され、そのうち5例に提示された薬剤が使用された。薬剤の効果が検討できた4例全例で腫瘍の縮小が得られ、PR 2例、SD 2例であった。PGPVsは11例( 10%)に認め、3例で生殖細胞系列由来を確認する遺伝学的検査が行われた。BRCA1 の病的バリアントが検出された平滑筋肉腫例で、家系内で乳癌や膵癌を認め遺伝学的検査を行い、germlineでもBRCA1 の病的バリアントが検出された。がん遺伝子パネルで、44%に治療薬の選択肢が提示された。Genotype-matched therapy を受けた症例は少なかったが、全例で腫瘍の縮小を認め、有効性が示された。また、遺伝性腫瘍が同定される場合があり、家族歴に注意すべきと考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19感染症が5類感染症の扱いになったが、臨床業務の増加、および研究環境の制限により、予定していた研究の遂行はやや難しかった。しかしながら、C-CATに集められたがん遺伝子パネル検査の全国データを用いた研究を行う前段階の研究として、岡山大学で行った肉腫のがん遺伝子パネル検査の解析を行うことができた。やや遅れ気味であるが、解析を行い、結果は第38回日本整形外科学会基礎学術集会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
C-CATには約3000例の肉腫のがん遺伝子パネル検査結果と臨床データが登録されている。肉腫に関するがん遺伝子パネル検査結果の全国データおよびその臨床データをC-CATから取得し、当院で行ったがん遺伝子パネル検査解析と同様のアプローチで解析を行う予定である。具体的には、Foundation-1CDxがん遺伝子パネル検査により検出された遺伝子変異の結果を解析し、次のことを明らかにしたい。1:肉腫全体で特異的な遺伝子異常があるか、2:それぞれの組織型で特異的な遺伝子異常があるか、3:がん遺伝子パネルが確定診断に有効な検査になりうるか、4:がん遺伝子パネル解析結果が新規治療につながるか。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染症が令和5年5月から5類感染症の扱いになったが、医療機関でのCOVID-19に対する対応は今まで通りであり、COVID-19患者に関連する臨床業務はあまり減らず、研究環境の制限もまだ残っていた。そのため、研究の進捗がやや遅れ気味であった。COVID-19の影響は続いており、令和5年度に行う予定だった解析に使用する消耗品等を購入することができず次年度使用が生じた。令和6年度には研究を加速させていきたいため、当初予定に上乗せする形で解析費用に充てる予定である。
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