研究課題/領域番号 |
23K08643
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
中嶋 幸生 岡山理科大学, 獣医学部, 准教授 (80785775)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 悪性骨軟部腫瘍 / 骨微小環境の正常化 / 破骨細胞融合阻害薬 / 変形性関節症・関節リウマチ / 軟骨肉腫 / 線維肉腫 / 滑膜肉腫 / 多発性骨髄腫 |
研究実績の概要 |
悪性骨軟部腫瘍は、骨微小環境において、骨吸収と骨形成のバランスを変化させ、罹患部での疼痛や病的骨折を引き起こす。その中でもGalectin3は破骨細胞の細胞膜に発現し、細胞融合を引き起こすことによって分化を促進する。また、これまでの研究によって、Galectin3の機能部位を抑制する特異的中和抗体を骨肉腫に投与することで腫瘍の進行を遅延させる効果が確認されている。 本研究の目的は、Galectin3の中和抗体の効果が骨肉腫以外の悪性骨軟部腫瘍の組織型でも適応拡大することが可能かを検証するため、Galectin3のタンパク発現プロファイルを調査することである。 共同研究にてGalectin3の機能的配列に対する特異的中和抗体を作製した。調査対象サンプルとして、ステージ、グレード、腫瘍のサイズなどの臨床データが紐づけされた検体を用いた。具体的には、骨肉腫(n=127)、滑膜肉腫(n=98)、線維肉腫(n=96)、軟骨肉腫(n=11)、骨髄腫(n=18)、巨細胞腫(n=40)、乳癌の骨転移(n=17)、前立腺癌の骨転移(n=77)などを対象とし、コントロールとして正常骨(n=20)、正常関節滑膜(n=6)における発現を調査した。計584例の臨床検体を用いてGalectin3を標的とした免疫染色を実施した。客観的に評価するため検者二名が盲検下にて評価し、染色スコアリング0~1を陰性、2~4を陽性とし、陽性率を精査した。臨床データと染色スコアリングとの相関関係をANOVA/TurkeyHSDとピアソンの相関解析を用いて解析した。 ガレクチン3の陽性率は、骨肉腫69.3%、線維肉腫75.0%、滑膜肉腫74.5%であったことから、我々が開発した抗Galectin3に対する中和抗体は、他の骨軟部腫瘍に対しても効果を示す可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記、及び下記に記載のとおり、現在既に適応拡大となる病態を見出し、in vivoモデルでの試験を開始しているため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究結果から、悪性骨軟部腫瘍の病態にGalectin3が関与していることが示唆された。よって、作製された抗Galectin3の機能部位に対する中和抗体は、悪性骨軟部腫瘍の治療候補薬として期待できる可能性がある。これらの結果から、現在、骨肉腫以外の陽性率の高い悪性骨軟部腫瘍のがん患者由来腫瘍移植モデル(PDX:Patient-Derived Xenograft)を使用して、作製された中和抗体を投与することにより、適応拡大を目指して治療効果を検討している。
また、さらなる適応拡大として、関節疾患である変形性関節症や関節リウマチも対象として検討した。解析対象サンプルは滑膜とし、正常検体(n=28)、変形性関節症(n=57)、関節リウマチ(n=154)を用いて、Galectin1~17の発現量のRNAseqデータについて解析した。その結果から、正常対象群に比較して変形性関節症の症例群において、Galectin3の発現上昇が認められた。そこで滑膜の組織マイクロアレイを用いて、Galectin3を標的とした免疫染色を実施し、発現の局在性を調査したところ、変形性関節症の症例群において、破骨細胞に発現が認められた。これらの結果から、適応拡大として、Galectin3の機能部位に対する中和抗体は、破骨細胞表面のGalectin3を阻害し、破骨細胞の融合を抑制するため、異常な骨リモデリングを遅延させる可能性がある。よって、変形性関節症の新規治療薬として期待できるため、これらの可能性についても、今後の研究の対象とする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在実施中のin vivo試験に対する支払いをまだ終えていないため。
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