研究課題/領域番号 |
23K08652
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
大内田 守 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (80213635)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 滑膜肉腫 / 免疫沈降 |
研究実績の概要 |
異なるTag配列を持つSS18-SSXおよび遺伝子Aの発現ベクター作製を行った。誘導可能なTetプロモーターを持つpRetroX-TetOne-puroレトロウイルスベクターはpuromycin耐性型であるので、puromycinの代わりにBlasticidin耐性型の改良ベクターを作成した。 Blasticidin耐性型にはFLAG-tag、S-tag、GFP融合型SS18-SSXを挿入し、puromycin耐性型にはFLAG-tag、Strep-tagII融合型遺伝子Aを挿入した。まずSS18-SSXベクターを用いたレトロウイルスを滑膜肉腫細胞株に感染させた。Blasticidin耐性株は多数得られたが、GFP-SS18-SSXを発現する割が低く、数回試みたが最終的に断念した。GFPはSS18-SSX蛋白局在変化の可視化モニタリングに必要であるが、Blasticidin耐性遺伝子挿入型ウイルスベクターにとってはSS18-SSXとGFPの融合遺伝子の挿入は、全サイズが大きくなり不安定になった可能性が考えられた。 そこで、Blasticidin耐性型ベクターにはサイズが小さいFLAG-tag、S-tag、GFP融合型の遺伝子Aを挿入し、puromycin耐性型ベクターには6xHis-tag融合型のSS18-SSXまたは6xHis-tag融合型GFPを導入した。ベクターを作成後、まず、遺伝子Aベクターを用いてレトロウイルスを作製後、滑膜肉腫細胞株に感染させた。Blasticidinで耐性株を選択後、シングルクローンを単離した。そのシングルクローン細胞株に、ドキシサイクリンを添加するとTetプロモーターからGFP-遺伝子Aの融合蛋白が発現され、well中の滑膜肉腫細胞がほぼ100%死滅することを確認した。遺伝子A発現により滑膜肉腫が死滅することを検証した発現誘導系の作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
がん融合遺伝子SS18-SSXを持つ滑膜肉腫に遺伝子Aを発現させることにより、滑膜肉腫が死滅する発現誘導系を作成し、SS18-SSX蛋白および遺伝子A蛋白と直接作用している標的蛋白を、Tagを介して免疫沈降し、その標的蛋白の同定と機能解明を目指す。今年度は2つのベクターとしてpuromycin耐性型とBlasticidin耐性型を作製して、SS18-SSX遺伝子と遺伝子Aを入れた。その際に、Blasticidin耐性型はベクターサイズがやや大きくなっているのだが、そのサイズの大きいベクターにサイズが大きいSS18-SSX遺伝子を入れた。結果的に安定した発現が観察されないことより、ベクターサイズが原因ではないかと考えられた。その後、ベクター側と挿入遺伝子側を入れ替えて作製し、発現誘導系を樹立した。やや遅れてはいるが、遺伝子A発現により滑膜肉腫が死滅する発現誘導系の作製に成功した点は成果があったと感じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、遺伝子A発現により滑膜肉腫が死滅する誘導可能な滑膜肉腫細胞に、6xHis-tag融合型のSS18-SSXまたは6xHis-tag融合型GFPを持つpuromycin耐性型ベクターを導入する。両方の遺伝子(Tag付きSS18-SSXとTag付き遺伝子A)を持つ細胞が出来次第、Tagを介して免疫沈降と標的蛋白の同定を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はベクター作製と導入細胞株の樹立を行っていたが目的の細胞株がうまく得られなかったため、変更案としてのベクター作製とその導入細胞株の樹立を行うことになった。そのため、全体としてベクター作製と導入細胞株の樹立の繰り返しとなったため、経費としては既存の消耗品等で進めることで結果的に次年度使用額が生じてしまった。 次年度は、両方の遺伝子(Tag付きSS18-SSXとTag付き遺伝子A)を持つ細胞株ができ上がり次第、免疫沈降と、それにより得られた蛋白・蛋白複合体を用いて質量分析解析を行い、SS18-SSXと遺伝子Aが結合している標的蛋白質の同定を計画している。元々の計画していた細胞株ではなく変更した細胞株となり、バックアップのための細胞株も計画しているため、数種類の細胞株から、それぞれのTagを用いた免疫沈降物を回収すると、それぞれのコントロールも含め、解析する検体数は当初計画より増えてしまう。そこで、弊学共同実験室の質量分析計による解析ではなく、高感度の質量分析計を使用しているメーカーへ質量分析解析とインフォマティック解析の外注を行う計画であるが、今年度生じた次年度使用額は主にこの外注費への使用を計画している。また、当該年度以降分として請求した助成金と合わせて、得られた標的蛋白用の抗体や発色試薬、ウエスタンブロット関連試薬や細胞培養培地と血清の購入を計画している。
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