研究課題/領域番号 |
23K08655
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
馬渡 正明 佐賀大学, 医学部, 教授 (80202357)
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研究分担者 |
久木田 明子 佐賀大学, 医学部, 客員研究員 (30153266)
上野 雅也 佐賀大学, 医学部, 病院助教 (20879811)
平田 寛人 佐賀大学, 医学部, 助教 (90971755)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 骨折モデル / 骨形成 / Nupr1 / MSC / 遺伝子欠損マウス |
研究実績の概要 |
転写制御因子Nupr1は炎症や酸化ストレスなどで誘導されるキープレイヤーとして知られている。申請者らはNupr1KOマウスでは骨形成が亢進し、加齢マウスの老化細胞形成が減少することを見出しNupr1が骨形成や細胞老化においても重要な働きを持つことを明らかにした。しかしながら、変形性関節症や骨折のような病態におけるNupr1の働きについては明らかでない。本年度は、まず大腿骨に骨欠損を作成した後に間葉系幹細胞(MSC)とScaffoldを移植して骨再生を試みるモデルを計画し、野生型(WT)マウスとNupr1KOマウスを用いた骨欠損モデルやMSCとScaffoldを用いたin vitro3D cultureの骨形成の予備実験を行った。また、WTマウスとNupr1KOマウスの骨髄から細胞を単離培養し、間葉系幹細胞(MSC)を樹立した。MSCを用いて骨芽細胞分化誘導後1,2週間にアルカリフォスファターゼ染色を行ったところ、Nupr1KOマウス由来のMSCから分化した骨芽細胞がWTMSCより強いアルカリフォスファターゼ活性を認めた。さらに、Nupr1KOマウス由来のMSCはWTMSCと比較し、培養4週間後のアリザリンレッド及びフォンコッサ染色も顕著に亢進しており、Nupr1KOのMSCはWTMSCと比較し骨芽細胞分化が亢進していることが考えられた。一方、Nupr1の発現量と加齢の関係について解析するために、人工膝関節全置換術を行った変形性膝関節症患者の骨からRNAを抽出しRT-PCRを行った結果、骨細胞におけるNUPR1の発現が年齢と正の相関を示すことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、マウスの匹数が十分ではなかったため、マウスの維持と実験に必要なマウスを準備を行うとともに、骨折の予備実験やin vitroでMSCをScaffoldに入れて骨形成の評価を行った。以前の結果から、Nupr1が骨芽細胞分化の初期分化を抑制する可能性が考えられたため、WTとNupr1KOマウスの骨髄から間葉系幹細胞(MSC)を樹立した。以前の申請者らの研究から得られていたNupr1KO初代骨芽細胞からの骨芽細胞分化の亢進作用が、Nupr1KOMSCを用いた時にさらに顕著にみられることが明らかになった。また、ヒトの骨細胞においてNUPR1の発現が年齢とともに増加するという新たな知見を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
WTとNupr1KOマウス由来のMSCを用いた骨芽細胞分化の評価をRT-PCR法などを用いてさらに定量的に行う。WT及びKOマウス由来MSCをScaffoldに入れてin vitroで3D cultureを行い、骨形成を評価する。WT及びKOマウスの頭蓋骨に骨欠損を作成した後MSCを移植したモデルマウスを作成し、経時的に骨再生の解析を行う。Nupr1阻害剤を細胞培養系やマウスに投与して骨再生における作用を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、マウスの匹数を十分に用意する期間としたため、予定より解析に必要な試薬類を少なくすることができたので次年度使用額が生じた。次年度では、骨折モデルの実験の解析をするために使用する予定である。
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