研究実績の概要 |
変形性関節症(Osteoarthritis, OA)患者のゲノムワイド関連解析により、疾患と関連する一塩基多型(Single nucleotide polymorphism; SNP)が数多く同定されたが、疾患発生機序の解明や薬剤開発はほとんど進んでいない。OAは、SNPのような遺伝要因だけでなく、炎症や力学的負荷等による環境要因が絡み合う複合的な多因子疾患であることが知られており、この複雑さが、治療薬開発を遅延させている。この現状を解決するには、これらの複合要因を模倣できるヒト関節軟骨モデルの開発が必須である。 そのモデルを開発するためには同じ環境下で同一個体内でのSNP変異による軟骨形成能の違い、炎症への反応性の違いなどを検証する必要がある。 今年度はCRISPR/CAS9システムを用いて各種感受性遺伝子SNPs (GDF5,rs143383(T/C))を各々iPS細胞へ導入し、各SNPが導入できているかをSequence解析により確認することを行っていたが、良い株が現状まだ得られていない。代替案として正常のiPS細胞株のGDF5,rs143383(T/C)のシークエンスを行い、すでに変異を持っている株の同定を行った(T/T,T/C, C/C)。これらのヒトiPS細胞からLBM及びExpLBM細胞を誘導し、ExpLBM細胞の評価を申請者らが報告した評価法である、Flow cytometry解析(ExpLBM;CD140b, CD90陽性, CD82弱陽性)で評価し、問題なくExpLBM細胞を誘導できている。 これらのExpLBM細胞を用いて、現在3次元関節軟骨様組織体を作製し、Realtime-qPCR法による発現解析(COL2,COL1,SOX9, PRG4, ACAN等)、組織学的評価(HE染色、SafraninO染色等)、免疫組織学的評価(COL2,COL1,SOX9, PRG4, ACAN等)を施行している。
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