研究課題/領域番号 |
23K08689
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
清水 智弘 北海道大学, 大学病院, 講師 (60784246)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 特発性大腿骨頭壊死症 / 腸内細菌叢 |
研究実績の概要 |
特発性大腿骨頭壊死症(ONFH)の発症に関わる因子について、未解明な部分が多い。近年、腸内細菌叢と健康維持や様々な疾患の病態との関連が明らかとなった。本研究では、ONFH患者の腸内細菌叢を健常対照者と比較することを目的とした。 ONFH患者21例、対照として非ION患者(以下HC群)18例を解析対象とした。ONFH患者のうちアルコール関連群(以下A群)が7例、ステロイド関連群(以下S群)が14例であった。各対象者の糞便検体を採取し、16SリボソームRNA遺伝子を対象としたシーケンスにより腸内細菌叢を解析した。 細菌叢の多様性解析として一般的に用いられるShannon指数は、A群が他2群と比較して有意に低かった(P<0.05)一方で、S群とHC群との間に有意差はなかった(P=0.12)。各群の腸内細菌叢を構成する菌種の解析では、201の細菌属に有意差が見られた。中でもFaecalibacterium属に最も顕著な有意差が見られ、この細菌はS群とHC群では検出されたが、A群では検出されなかった。 本研究ではA群で腸内細菌叢の多様性の低下が見られ、アルコールの習慣的摂取と腸内細菌叢の多様性低下の関連を示す過去の報告と同様の結果が得られた。また、Faecalibacterium属は抗炎症作用や抗酸化作用を示すことが先行研究より明らかになっており、Faecalibacterium属の減少は炎症性腸疾患や肥満、肝硬変、癌、アレルギー疾患など多様な疾患の発症や進展との関連が報告されている。ONFHの発生に酸化ストレスの関与が明らかにされており、本研究ではA群の糞便中からFaecalibacterium属が全く検出されなかったことから、この細菌の枯渇によるアルコール関連ONFHの病態と何らかの関連がある可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例は順調に蓄積しているが難病疾患のため更なる症例の蓄積を行う必要がある。腸内細菌叢の解析手法は概ね確立した。
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今後の研究の推進方策 |
症例の蓄積と動物モデルを用いた研究との整合性を調査する
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次年度使用額が生じた理由 |
患者リクルートが想定より少なかったため、使用額が生じてしまった。 次年度に繰り越し、症例数が増えた際に充填する。
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