研究課題/領域番号 |
23K08704
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
笹沼 秀幸 自治医科大学, 医学部, 准教授 (50528651)
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研究分担者 |
高橋 恒存 自治医科大学, 医学部, 講師 (80781301)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 肩関節 / 腱板断裂 / 大動物 / 腱移植 |
研究実績の概要 |
ブタの肩の棘上筋腱と棘下筋腱の付着部を解剖学的かつ組織学的に評価した。棘上筋腱は、棘下筋付着部と複合腱を形成し、大結節後方に付着することが判明した。その構造は、ヒツジや犬と類似していた。まあ、ヒトとは違い腱板と関節包が完全に分離することが判明した。組織学的にはヒトの腱板の骨腱付着部とブタのそれが4層構造を有しており、類似していることが判明した。次に急性腱板断裂・修復モデルを作成し慢性実験を行った。術後一カ月の腱板縫合部の組織を評価した。腱板は骨と連続性を保っており、組織学的にも骨腱付着部の修復が開始されていることが確認された。ここまでの結果を第50回日本肩関節学会で発表し、その後に論文化した(Journal of Orthopaedic Science 2023, in press)。 次にブタ慢性広範囲腱板断裂モデルを作成し、その一カ月モデルの組織学的評価を行った。腱板断端部は壊死を起こしており、腱板のコラーゲンの配列は乱れ、血管新生が確認された。しかし、軟骨化生や石灰化が確認できなかったことから、ヒトの慢性腱板断裂とは異なる所見であった。今後、ブタの月齢や慢性実験の期間を検討する必要性があると考えている。ブタの種類やこれを第38回日本整形外科基礎学術集会で発表した。 広範囲腱板断裂に対して、同種骨を用いた骨付き膝蓋腱移植モデルを予備実験として作製した。術後一カ月での上腕骨骨頭と膝蓋骨の骨癒合をCTで評価したが、骨吸収が進行している結果であった。現在、自家膝蓋腱とハムストリング腱を用いた再建術に術式を変更し、実験を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、ブタの肩腱板断裂モデルの報告が新規的な取り組みであり、これが英語論文で報告できた。今後はこのモデルを用いて、広範囲腱板断裂への最適な欠損部補填素材の検討が行えるようになった。現在、膝蓋腱とハムストリング腱を用いた修復術を作成しており、一カ月モデルから組織学的・力学的評価を行っていく予定であるので、予定通りに研究が進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
ブタの広範囲腱板断裂モデルに対する膝蓋腱修復術とハムストリング修復術の組織学的・生体力学的検討を行っていく予定である。また、副次的な研究として広範囲腱板断裂モデルの組織学的変化から、腱板断端に生じる慢性的変化である脂肪変性や異常血管新生発生の機序に関しても評価していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はブタにおける肩腱板断裂モデルを確立した。次年度からこの研究の中心となる広範囲腱板断裂モデルに対する膝蓋腱移植とハムストリング腱移植手術の有用性の比較を開始するために次年度に研究費を使用する予定とした。
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