研究課題/領域番号 |
23K08710
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
池田 篤史 筑波大学, 医学医療系, 講師 (50789146)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 膀胱癌 / 膀胱内視鏡検査 / 視線計測 / Stationary aze entropy |
研究実績の概要 |
膀胱内視鏡鏡検査は、膀胱癌の治療において不可欠な手技である。しかし、その診断精度は、手技を行う医師の知識や経験によって異なる可能性がある。本年度の研究では、医学生と泌尿器科医が同じ膀胱鏡の映像を観察し、視線の位置や動きを測定することで、膀胱鏡の観察方法の違いを改めて評価した。また、通常の膀胱内視鏡検査の動画像とAIによる病変検出の動画像を並べて同時に観察した場合の計測も行ない評価を行なった。 膀胱内視鏡動画像は、初発の筋層非浸潤性膀胱癌の術前に撮影されたもので、丈の低い乳頭状腫瘍が3個、前方、頸部に存在する症例(UC、HG、pTa)であった。被験者は、医学生24名、泌尿器科医8名であり、観察中の視点座標と停止時間は、画面ベースの非接触型視線追跡・視線計測システムを用いて取得した。通常の膀胱内視鏡検査の症例の映像を観察した時と、通常の映像とAIによる病変検出の映像を並列で観察した場合の被験者の視線計測し、解析をおこなった。 結果は、医学生群と比較して泌尿器科医群では、膀胱内視鏡検査の映像を視聴する際に、stationary gaze entropyが有意に大きく映像を広範囲に見ていることが明らかになった。これは、泌尿器科医が経験的に病変を確実に同定することを意識して、画面に映る膀胱粘膜面の状態を効率よく観察しているからと推察される。また、通常の映像とAIによる病変検出を行った映像を並べて同時に観察した場合、その観察パターンに違いがあることも明らかになった。医学生群は泌尿器科医群と比較して、AIの映像を注視する割合が大きかった。結論として、膀胱内視鏡検査の映像の視線計測により、経験豊富な専門医が膀胱内視鏡検査中に映像の広い範囲を効率的に観察していることを立証した。 以上をJornal of Endourologyに投稿し、採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膀胱内視鏡検査の映像を経験の異なる医師と医学生に視聴させ、視線計測を行うことで、stationary gaze entropy(SGE)が経験値を測定するひとつの指標になることが確認された。この際に、被験者が作成した膀胱内視鏡所見図も収集しており、現在解析中である。また、実際の膀胱内の粘膜の状態を再現した膀胱ファントムの作成が完了し、計画している 「膀胱ファントムを用いた術者別の病変認知・観察記録の作成・認知科学的な差異の検討」を開始する準備が整っている。 「膀胱内視鏡AIによる診断支援の効果の検証」についてもアノテーションデータ作成を容易にするソフトウェアの作成をおこない、検証の準備を整えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、実際の膀胱癌症例をもとに作成した複数の種類の膀胱ファントムで評価と比較を行い、被験者の技量を習熟度スコアの入力情報として算出することを目指す。また、被験者にはインタビューを実施し、診断や記録した理由や被験者が感じた自身の技量における問題意識を収集する。また、膀胱内視鏡動画を静止画分解し、先行研究で開発しているAIを利用した膀胱内視鏡検査支援システムのプロトタイプにおいて検出した病変候補の領域について、被験者毎に静止画毎の評価を行い、これらも習熟度スコアの入力情報として算出することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
条件にあうPCの調達ができなかったこと、演題発表のため予定していた海外学会への参加がなくなったことから次年度に繰り越したため。
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