研究課題/領域番号 |
23K08729
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
堀口 明男 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 病院 泌尿器科, 准教授 (20286553)
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研究分担者 |
櫛引 俊宏 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 医用工学, 准教授 (30403158)
東 隆一 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 病院 形成外科, 教授 (00531112)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 難治性尿道狭窄症 / 口腔粘膜細胞 / 細胞足場材料(スキャホールド) |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、難治性尿道狭窄症に対する低侵襲かつ高い治癒率を有する新規治療方法を開発することである。具体的には、低侵襲に採取可能な少量の口腔粘膜細胞を体外で培養し、細胞足場材料(スキャホールド)とともに経尿道的治療(内尿道切開)を施した部位へ投与することで、組織の瘢痕化(尿道の再狭窄)が進展する前に尿道上皮組織の再生を促進させ、難治性尿道狭窄症の治癒を目指す。本研究では、これまでに私たちが確立したウサギ尿道狭窄症モデルに口腔粘膜細胞とスキャホールドを適用して治療効果を確認し、将来の臨床応用を目指した研究を実施する。 本年度は、内尿道切開刀を用い、内視鏡下でウサギ尿道狭窄部位の内尿道切開を実施した。これまでに、尿道狭窄症モデルウサギの作製と狭窄部の内尿道切開を行った報告は無く、臨床(ヒト)と全く同じ手技・方法により、尿道狭窄症モデルウサギの狭窄部の内尿道切開を実施した世界で初めての研究である。さらに、内尿道切開後の治療評価方法は、尿道造影による尿道狭窄幅の計測、尿道内視鏡による上皮組織の観察、肉眼的所見および組織学的所見から狭窄部の状態と尿道上皮組織の再生について評価した。病理所見としてHE染色およびマッソントリクローム染色による線維組織の染色を行い、病理組織学的な検討を行った。本研究の結果、経尿道的な口腔粘膜細胞の移植が可能であることが示された。 次年度以降は、内尿道切開後に口腔粘膜細胞およびスキャホールドを投与し、難治性尿道狭窄症の治癒を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究期間では、これまでの研究成果を基に、ウサギより採取した口腔粘膜組織から上皮細胞を分離して培養している。ウサギ尿道狭窄モデルに対する内尿道切開は、これまでに我々が開発した動物モデルと小児用内尿道切開刀を用いて実施できることを確認でき、順調に研究が進展している。 これまでに、ウサギの口腔粘膜細胞を単離し培養した報告は少ない。汎用の細胞培養方法とは全く異なり、培地の選択だけでなく継代や培地交換にも特殊な技法を用いる必要があることが理由として挙げられる。例えば、口腔粘膜上皮細胞培養中は培地のカルシウムイオン濃度維持が重要であり、また継代の際には汎用のトリプシンを用いると死滅してしまう。そこで本研究では、①10%牛胎児血清、インスリン(5 μg/mL)および上皮細胞増殖因子(Epidermal Growth Factor: EGF)(10 ng/mL)を含むDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、②EGFおよびbovine pituitary extract(BPE)を含むKeratinocyte SFM (serum-free medium)、③前駆細胞のニッチ環境を再現した上皮細胞用のProgenitor Cell Targeting(PCT)培地を使用した。細胞継代時には、トリプシンよりも細胞剥離作用が比較的穏やかなアキュターゼを用いた。 ウサギから口腔粘膜組織を摘出後、ディスパーゼ水溶液(1,000U/mL)に浸漬、シート状の上皮細胞層を粘膜下組織から剥離し、アキュターゼ水溶液で細胞を分散させた。この細胞を①~③の各培地により培養を行った。その結果、①の培地では細胞が全く生着・増殖しなかった。②および③の培地では細胞が生着し増殖させることができたが、その細胞増殖速度は③>②であった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降、口腔粘膜細胞とともに投与するスキャホールドは、細胞が生着・増殖しやすく、切開部位に自在の形状で密着する材料を用いる予定である。さらに3年目以降は、IGF-1などの細胞増殖因子を徐放化させ、上皮細胞+スキャホールド+細胞増殖因子を確実に内尿道切開部位に供給できるように進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究動向調査を積極的に実施し、本研究の革新性や有意性について確認した。さらに、次年度以降、口腔粘膜細胞とともに投与するスキャホールドは、細胞が生着・増殖しやすく、切開部位に自在の形状で密着する材料を用いる予定であるため、その材料検討も行っている。 これらの理由から次年度使用額が生じた。 次年度以降も、積極的に研究動向を見極め、本研究の革新性を確立していく予定である。
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