研究課題/領域番号 |
23K08769
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
環 聡 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 訪問研究員 (20626741)
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研究分担者 |
森田 伸也 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (10365364)
高橋 遼平 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 訪問研究員 (90815367)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 腎移植 / トロンボモジュリン |
研究実績の概要 |
全てルイス種のラットを用いて腎移植モデルを作成した。 まず準備実験を行った。初めに24時間の冷保存による尿細管障害を評価するための実験を行った。冷保存を行わずに腎移植を行い腎移植後2時間の移植腎を採取し、これを24時間の冷保存して腎移植を行い腎移植後2時間で移植腎を採取したものと比較した。評価法はTUNEL アッセイと、トロンボモジュリンの免疫染色を行った。これにより、24時間虚血の移植腎はTMの著名な減少を認めたことを確認した。 次に本番の実験を行った。ドナーラットから採取した腎臓を、グループA(n=7)でトロンボモジュリンアルファ(TM)で飽和した冷たいUW灌流液中に24時間保存し、グループB(n=8)では、UW灌流液中に24時間保存した。レシピエントラットの両側固有腎を摘出し、に腎臓を移植したのち、術後1日、2日、7日に血液と尿のサンプルを収集し、クレアチニンクリアランス(Ccr)を測定しました。急性腎障害マーカーであるNeutrophil gelatinase-associated lipocalin(NGAL)もELISA法で測定した。 Ccr(ml/min/kg)はグループA vs グループBで、術後1日目が0.68±0.09 vs 0.23±0.09、術後2日目が1.22±0.4 vs 0.59±0.30、術後7日目がCcrでは2.63±1.42 vs 1.17±0.69であった(p=0.02、二元配置反復測定分散分析)。NGALの血清値(μg/ml)は、グループA vs グループB で術後1日目が6.5±1.7 vs 9.1±1.1、術後2日目が4.3±1.1 vs 8.9±0.8であった(p=0.02、二元配置反復測定分散分析)。移植後7日目に採取した移植腎をMasson-Trichrome染色で線維化の評価をしたところ、グループAで抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24時間の冷虚血時間が尿細管障害を与えることを確認し、そのうえでグループAとBで有意差をもって移植腎機能と、急性腎障害のデータであるNGALのデータを得ることが出来ている。また、病理学的にも線維化をグループAで抑えることが出来ている。このため、現状トロンボモジュリンアルファが移植腎のための冷虚血による腎障害を抑えることが出来ることが説明できる材料がそろってきている。 ただ、一方で抗凝固作用のみを添加することでも冷虚血による腎障害を抑えることが出来る可能性がある。このため、追加実験が必要であると考えられた。 抗凝固薬のみを添加するグループの作成をこれから作成していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、抗凝固薬の効果のあるアルガトロバンをトロンボモジュリンアルファのかわりに添加したグループCを作成し、これらのクレアチニンクリアランス、NGAL、移植腎の病理を確保してグループA、Bと比較していく。 また、他に組織からDNAを抽出してIL-6やCleaced caspase3、TNFαなどを検査してより多角的に評価を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
これから追加実験が必要であり、そのラットやデータ収集のための検査のための物品購入などが今後も必要である。
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