研究課題/領域番号 |
23K08792
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
松田 純子 川崎医科大学, 医学部, 教授 (60363149)
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研究分担者 |
渡邉 昂 川崎医科大学, 医学部, 助教 (60817071)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 膀胱移行上皮 / スフィンゴ糖脂質 / セラミド骨格 / フィトセラミド |
研究実績の概要 |
スフィンゴ脂質のセラミド骨格は、長鎖塩基 (LCB) と脂肪酸から構成され、それぞれに炭素鎖の長さ、不飽和化の程度、水酸化の有無による多様性がある。多くの臓器では、LCBの炭素数が18でΔ4位が不飽和化されたセラミド構造が主要な構造であるが、小腸や腎臓といった上皮組織には、LCBのC4位が水酸化されたフィトセラミド構造が豊富に存在する。我々は、先行研究で、膀胱の移行上皮組織にはLCBの炭素数が20のユニークなフィトセラミド構造が豊富に存在することを見出した。本研究では、LCBのC4位を水酸化するDihydroceramide:sphinganine C4-hydroxylase (DES2) のノックアウトマウス (Des2 KO) を用いて、フィトセラミド構造を欠損する膀胱組織の表現型解析を行った。野生型マウスとDes2 KOの膀胱組織のスフィンゴ糖脂質組成を薄層クロマトグラフィーおよび液体クロマトグラフィー質量分析で比較解析した結果、Des2 KOでは、HexCerとGM3に存在するフィトセラミド構造の大部分が欠損し、ジヒドロセラミド構造に置き換わっていた。組織学的解析の結果、Des2 KOでは膀胱移行上皮の最表層に存在するアンブレラ細胞が進行性に空胞化し、その頂端膜に特徴的に存在する膜タンパク質であるウロプラキンの発現が低下していた。これらの結果から、マウスの膀胱組織におけるフィトセラミド構造は主としてDES2によって合成されること、膀胱移行上皮細胞に発現するフィトセラミド構造は膀胱移行上皮細胞、中でもアンブレラ細胞の頂端膜の構造と機能において重要な役割を担っていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Sptssb KOマウスのJackson Laboratory からの導入に時間を要しているため、Sptssb KOおよびDes2&SptssbダブルKOマウス由来膀胱上皮組織のスフィンゴ糖脂質の構造解析に着手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
セラミド骨格の構造多様性 (フィトセラミド構造およびC20-長鎖塩基) が担う膀胱上皮細胞頂端膜の機能を明らかにするために、Des2 KOマウス、Sptssb KOマウス、Des2&SptssbダブルKOマウスの膀胱移行上皮組織の形態変化と機能変化を比較解析する。また、分子メカニズムの解析を目的として、Des2 KOマウスから、膀胱移行上皮モデル細胞および膀胱オルガノイドの樹立に取り組む。ヒト膀胱疾患とスフィンゴ糖脂質の構造多様性との関係を探索するために、ヒト膀胱の正常組織およびがん組織におけるスフィンゴ糖脂質の構造解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:Sptssbノックアウトマウスの導入が次年度となったため。 使用計画:Sptssbノックアウトマウスの購入に使用予定。
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