研究課題/領域番号 |
23K08814
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立駒込病院(臨床研究室) |
研究代表者 |
谷川 道洋 地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立駒込病院(臨床研究室), 婦人科, 医長 (70706944)
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研究分担者 |
曾根 献文 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (90598872)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | RNA結合タンパク質 / DNA損傷修復経路 / 相分離 / 卵巣がん |
研究実績の概要 |
本研究では新規DNA損傷修復関連RNA結合タンパク(RNA binding protein: RBP)の損傷誘導時の相分離(liquid-liquid phase separation: LLPS)による非膜オルガネラ形成への寄与の解明、PARP阻害薬耐性を獲得した卵巣がんの治療マーカー及び新規抗腫瘍メカニズムの開発を目的として行っている。網羅的スクリーニングデータからの新規候補因子の抽出とDNA損傷修復経路における機能解析という流れで研究を行っている。 独自のsiRNA libraryによる網羅的スクリーニングで同定された新規DNA損傷修復関連RBPに着目し、DNA損傷部位での相分離による集積形成の観察を蛍光免疫染色法/ライブセルイメージングを用いて行っている。また、これらの因子のDNA損傷修復経路以外の経路への寄与も発見し、現在分子細胞学的手法で解明中である。これらの新規因子と遺伝性乳癌卵巣癌原因遺伝子との関連も見出しており、新規の卵巣癌治療標的につながる可能性が示唆されている。 本研究では、難治卵巣がんの臨床的解明、臨床応用も志向している。卵巣がんにおけるPARP阻害薬抵抗性獲得の克服という臨床的課題のため、見出しているDNA損傷修復関連RBPとDNA関連lncRNAとの関連という観点から、PARP trapping及びPARP阻害剤感受性への寄与を検討していく。また、蛍光免疫染色法/ライブセルイメージングを用いて、新規DDR関連RBPによる相分離を介した非膜オルガネラ形成メカニズムへの寄与を検討していくことも課題としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、申請者と東京大学産婦人科学教室との共同研究で行っている。申請者が研究計画を立て、大学院生が分子生物学的手法による基礎的実験を行っている。すでに一つの新規DNA損傷修復関連RBPに着目して、放射線により誘導されるDNA損傷部位においてBRCA1/2を含めた既存のDNA損傷修復関連蛋白と複合体を形成すること、損傷シグナル伝達に寄与することを明らかにしている。また、これらのRBP複合体が相分離による集積を形成しつつゲノム恒常性に関連する新規機能をもつことを明らかにしている。 開始1年目として順調に研究は進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の課題として、すでに見出している機能を分子生物学的手法により、より詳細に明らかにしていくことが重要と考える。一方で、難治卵巣がんの臨床的解明、臨床応用も志向している。 卵巣がんにおいて、PARP阻害剤が卵巣がんの無再発期間や全生存の面で治療成績を向上させたことは明らかにされているが、PARP阻害剤抵抗性獲得の克服が大きな課題となっている。本研究では、見出しているDNA損傷修復関連RBPとDNA関連lncRNAとの関連という観点から、PARP trapping及びPARP阻害剤感受性への寄与を検討していく。また、蛍光免疫染色法/ライブセルイメージングを用いて、新規DDR関連RBPによる相分離を介した非膜オルガネラ形成メカニズムへの寄与を検討していくことも課題としている。 上記の基礎的解明を背景に、DDR関連非膜オルガネラに寄与するRBP及びlncRNAで構成されるRNPを探索し、PARP阻害薬耐性を獲得した卵巣がんの新規治療マーカー開発や抗腫瘍メカニズムへの応用可能性を検証する。卵巣がん臨床検体、樹立した卵巣がんオルガネラを活用した検討も予定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の一年目の基礎的実験は、前年度までの研究課題と継続性のある部分も多く、抗体やFACS等の試薬で研究室にすでにある材料で行える部分が多かった。
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