研究実績の概要 |
・細胞老化と原発性卵巣不全(POI) 抗がん剤であるシクロホスファミド(Cy)の投与が卵巣機能を低下させることは知られている。老化細胞は細胞増殖能を失い、炎症物質などを分泌することで様々な病態に関与している。Cy投与によるPOIモデルマウスでは、卵巣顆粒膜細胞で細胞老化マーカー(p16, p21, p53, γH2AX)が増加していた。ヒト顆粒膜細胞培養おいて、Cy投与はp16, p21, p53, γH2AXが増加した。細胞老化作用薬であるダサチニブとケルセチン(DQ)の投与は、POIモデルマウスとヒト顆粒膜細胞培養においてこれらの細胞老化マーカーを低下させた。POIマウスにDQを投与すると、排卵が誘導され、妊孕能が改善した。DQはCyによるPOIに有効である可能性が示された。 ・生活習慣やストレスは生殖補助医療(ART)結果と関連がある 地中海型食事パターンや睡眠習慣といったライフスタイルがART結果と関連している。われわれは食事習慣、ライフスタイル、生殖医療特異的QOLスコア(Ferti-QoL)を包括的に検討し、どの因子がART結果と関連しているかを調べた。初めてART治療を受ける291人の女性を対象に前向きに調査し、質問票の結果と、ART治療結果との関連性を調査した。 採卵あたりの良質胚盤胞率は、頻繁の魚の摂取と低い傾向にあった。臨床妊娠率は、オリーブオイルの頻繁な摂取とコンピュータの長時間使用と有意に高い関連があり、FertiQoL Total scaled treatment score高値で高い傾向にあった。妊娠反応陽性は、コンピュータの長時間使用で有意な肯定的な関連をうけ、喫煙しているパートナーによって否定的な関連がある傾向だった。以上より、オリーブオイルは食事習慣の中でも重要な因子であり、QOLとパートナーの禁煙支援は不妊カップルには重要かもしれない。
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