研究課題/領域番号 |
23K08820
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中村 智子 名古屋大学, 医学部附属病院, 准教授 (40732681)
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研究分担者 |
岩瀬 明 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (20362246)
大須賀 智子 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (30778296)
仲西 菜月 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (30876404) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 子宮内膜症 |
研究実績の概要 |
子宮内膜症の主病態は慢性炎症とされているが、炎症の機序は解明されていない。。一方、老化細胞は細胞老化関連分泌形質SASPを有し炎症を起こすことが知られているが、我々は内膜症老化細胞こそが炎症と病変拡大の一因ではないかと考えた。内膜症における細胞老化の関与を明らかにし、炎症やパラクライン老化を介して卵胞障害や病変拡大する機序を解析し、細胞老化治療薬の内膜症への応用を本研究の目的としている。 今年度は、正常子宮内膜間質細胞(nESC)・内膜症子宮内膜間質細胞(eESC)・内膜症異所性内膜間質細胞(CSC)を手術検体より採取し比較した。CSCでは老化細胞マーカー(形態学的評価・SA-β-Gal・p16INK4a・laminB1)が有意に高かったことを示した(SA-β-Gal, P <0.001; p16INK4a, P <0.05; LaminB1, P <0.05)。また、CSCはIL-6等のSASP関連サイトカインを有意に発現・分泌していることをサイトカインアレイおよび蛍光免疫染色にて示した。これらの結果より、子宮内膜症患者において内膜症病変では老化細胞が多く存在し、老化細胞から産出されるサイトカインが内膜症性の炎症に関与している可能性が示唆された。次に、老化細胞除去剤の効果について検討した。アジスロマイシン(AZM)やnavitoclax (ABT263)などの老化細胞除去剤は、CSC生存率を低下させることを示した(AZM: P <0.001, ABT263: P <0.01)。さらにAZMは、IL-6分泌を抑制させた(P <0.05)。 今後、内膜症モデルマウスを用いて老化細胞除去剤の効果を、病変の拡大・IL-6レベル・組織線維化等から評価する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、in vitroの実験系を中心に進めた。子宮内膜症における炎症に、老化細胞が寄与している可能性を示すことができ、老化細胞除去薬による効果も示すことにも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、マウスモデルを用いたin vivoの実験系を進める。内膜症病変内の老化細胞が炎症を介したパラクライン作用により、どのように病変拡大させるか、どのように卵胞発育障害を起こすかにつき解析する。また、子宮内膜症治療薬としての老化細胞除去薬の可能性を評価していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度は、細胞実験を中心に行っていたが、次年度は動物モデルを用いた薬剤治療効果判定を行う予定である。
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