近年、次世代シークエンス(NGS)の普及により染色体転座などの構造異常の切断点は顕微鏡レベルでの観察以上に複雑な異常を伴っていることがわかってきた。本研究では、ショートリードのNGSを用いたメイトペア法、ロングリードのNGSを用いたアダプティブ・サンプリング法による濃縮を駆使して、複雑構造異常の切断点とジャャンクションの同定を行う。これまで研究代表者たちのデータから、新生複雑構造異常の大多数が父親由来の染色体に発生しており、精子形成のいずれかのタイミングで構造異常が発生している。本研究では、ゲノム・エピゲノム的解析により、精子形成のどのタイミングでどのような生理現象に起因して DNAの切断と誤修復が生じるかを検討する。14例の3-way転座等の複雑構造異常の切断点をショートリードのNGSを用いたメイトペア法、ロングリードのNGSを用いたアダプティブ・サンプリング法を用いて同定し、ヒトゲノム参照配列T2T上にマップした。今後、それぞれを(1)成熟精子の ChIP-seqのデータにマップし、ヒストン修飾やクロマチン構造との関連を検討する。(2)成熟精子のATAC-seqやMNase-seqのデータにマップし、ヌクレオゾーム構造との関連を検討する。(3)成熟精子のHi-Cのデータにマップし、切断点のクラスターと核内配置、切断点間の位置関係、遺伝子発現ユニットとしてのトポロジー関連ドメイン(TAD)との関連を検討する予定である。
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