研究課題/領域番号 |
23K08872
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
岩城 豊 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (10895022)
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研究分担者 |
杉浦 真弓 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (30264740)
佐藤 剛 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (80326149)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 慢性子宮内膜炎 / RNA sequence / トランスクリプトーム解析 |
研究実績の概要 |
慢性子宮内膜炎(CE)は、着床不全の原因になることが報告されている。診断基準や治療方法は確立されておらず、難治性で不妊治療の延期が必要となる症例も存在する。細菌感染が主な原因であり、抗生剤投与が主な治療となる。本研究では、反復着床不全(RIF)症例の着床期子宮内膜を用いて発現遺伝子の網羅的解析を行い、CEに特徴的な遺伝子発現の状態の同定し、遺伝子発現状態とCEにおける治療反応性との関連について解析を行うことを目的とする。 RIF症例に対し、子宮内膜生検を行い、CD138免疫染色にてCD138陽性細胞5個/HPF以上をCE陽性とした。CE陽性群および陰性群、治療群の着床期子宮内膜に対してRNA-seq解析を行い、発現変動遺伝子(DEG)について検討した。これまでCE陽性群10症例およびCE陰性群33症例と、CE陽性群のうち抗生剤治療を行い、その後子宮内膜生検を行ったCE治療群5例に対し解析を行った。解析の結果、CE陽性群において、炎症に関連する遺伝子が多く高発現していたが、脱落膜化や着床の窓に関連する遺伝子には発現に差を認めなかった。48検体において高発現していた上位500遺伝子に対し、クラスター解析を行ったところ、2群に分かれたが、CE罹患の有無では層別化されず、脱落膜化や着床の窓に関連する遺伝子が多く検出され、採取時期に影響されていることが示唆された。次いで、主成分分析を行ったところ、CD138陽性細胞個数が0-2個と0-17個の2群に分かれ、CD138免疫染色により診断されたCE以外にも、より潜在的な炎症を反映したCEの存在が示唆された。 今後、主成分分析で高発現していた遺伝子について解析を行い、CEの新たなバイオマーカーとして利用可能か検討する方針である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標の症例数は達成し、順調に解析を行っている。 着床の窓や脱落膜化に関連する遺伝子についての検討も考慮していたため、可能であればホルモン補充周期のプロゲステロン投与から6-9日目の内膜生検が望ましいと考えられたが、当該施設の診療時間や被験者の通院の都合により、実際は3日目から10日目の内膜生検となった。 今後、症例が蓄積できれば、内膜採取時期を限定した解析を検討したい。
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今後の研究の推進方策 |
今後、主成分分析で高発現していた遺伝子について検討し、CEの新たなバイオマーカーをRNA sequnenceや免疫組織染色などどのような方法で検出するか模索する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
症例の集積に時間を要し、RNA sequence解析後の追加解析が遅れたため、次年度使用額が生じた。今後、2023年度の研究費も使用して、慢性子宮内膜炎の病態解明を目指し、免疫染色などの追加解析を行う予定である。
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