研究課題/領域番号 |
23K08877
|
研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
吉江 幹浩 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (50434014)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 慢性子宮内膜炎 / マイクロバイオーム / 短鎖脂肪酸 / 栄養膜細胞の分化・融合 |
研究実績の概要 |
子宮内に存在するマイクロバイオームの異常は、子宮内膜における持続的な炎症反応により慢性子宮内膜炎(Chronic Endometritis:CE)の発症原因となる。CEは、不妊・不育症と関連しているため、その病態解明による効果的な治療と簡便な診断が切望されている。本研究では、子宮内マイクロバイオームを構成する細菌とその産生代謝物に着目し、CE発症関連因子を同定し、CE原因菌の感染によって生じる子宮内膜の環境変化を解明するとともにその責任因子を標的とした予防・治療法、さらには早期診断マーカーを探索し、不妊・不育症の改善を目指す。 子宮内マイクロバイオームの解析に関しては進行が遅れているが、子宮内及び腸内マイクロバイオーム構成細菌に含まれる酪酸などの短鎖脂肪酸を産生する細菌と胎盤形成に不可欠な栄養膜細胞の分化・融合との関係について調べた。特に短鎖脂肪酸の中でも酪酸は、栄養膜細胞における絨毛性ゴナドトロピンやプロゲステロンの産生を促進すること、さらに栄養膜細胞特有の形態学的分化である細胞融合も促進することを新規細胞融合アッセイ系を用いて明らかにした。これらの知見は、細菌が産生する酪酸が妊娠時の胎盤形成過程において栄養膜細胞の分化・融合を促進し、胎盤絨毛機能を維持する重要な役割を担うことを示唆するものである。また、本年度は胎盤内環境を模倣するマクロ流体デバイスの作製も実施した。子宮内膜間質細胞においては、着床に重要な分化(脱落膜化)に対して酪酸が抑制的に作用する知見も得られており、引き続き子宮内及び腸内マイクロバイオームの異常との関連について調査している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
子宮内マイクロバイオームの異常に起因する慢性子宮内膜炎の特徴解析については進行が遅れているが、細菌が産生する短鎖脂肪酸が胎盤栄養膜細胞の分化・融合に及ぼす作用に関する知見を蓄積することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
子宮内マクロバイオームの解析に加えて、細菌が産生する短鎖脂肪酸の胎盤栄養膜細胞の分化・融合への影響について栄養膜幹細胞やマクロ流体デバイスを用いて調査する。また、着床に不可欠な子宮内膜間質細胞の分化(脱落膜化)に対する作用についても検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していた子宮内マイクロバイオームの特徴解析を進行することができなかったため。
|