研究課題
頭頸部癌において、免疫チェックポイント阻害薬(ICIs)がもたらす癌免疫微小環境の変化は、後の救済化学療法に相加・相乗効果を生み出す可能性がある。そのため、癌の可塑性・不均一性を備えた癌細胞の経時的分析が、化学療法や免疫療法で生じる薬剤感受性の変化や、治療効果予測を紐解く最適な個別化医療の鍵となると考えられる。経時的にエクソソーム内のmiRNAとctDNAの網羅的メチル化解析を検討することで、癌免疫微小環境の変化を可視化し、転移制御のメカニズムの解明や、早期診断・効果予測のバイオマーカーの確立を目指す。我々はこれまで、血液中に流れる腫瘍からのctDNAを中心にリキッドバイオプシー研究を行ってきた。ctDNAは、血中を浮遊している断片化したDNAである。経時的なctDNAのメチル化解析によって、初回手術から肺転移をきたすまでと、肺転移病変の手術後と、免疫療法治療後で、メチル化遺伝子のパターンが変化する現象を確認した。つまり、血液中に流れる腫瘍からのctDNAのタイプが、同一患者さんでもその時々の状態で変化していく現象を捉えることができた。我々は、次なるターゲットにエクソソームを選んだ。前述のctDNA研究は、アポトーシスした癌細胞から得た遺伝子情報である。本研究では、生きた頭頸部癌細胞から放出されるエクソソームのmiRNA情報と、アポトーシスした癌細胞からのctDNA情報を統合的に解析することで、新たな頭頸部癌の治療抵抗性のメカニズムの解明とモニタリングシステムの構築が可能になると考えた。2023年度は、継続してリキッドバイオプシーを行いctDNAの収集を行ってきた。現在、エクソソーム内のmiRNA解析のためのサンプル収集を行っている。
3: やや遅れている
エクソソーム内のmiRNA解析のためのサンプル収集を予定通り行っているが、同研究を行っているナノスーツ開発研究部での、エクソソーム回収の準備が遅れているためmiRNA解析が遅れている。
2024年度内に、ナノスーツ開発研究部でのエクソソーム回収体制が整えばmiRNA解析を開始できると考えている。
エクソソームの回収実験を2023年度は行えず予算執行が遅れ次年度使用額が生じてしまった。2024年度にエクソソームの回収実験を行う予定で予算執行できる予定である。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Scientific Reports
巻: 13(1) ページ: 5514
10.1038/s41598-023-32486-8
Anticancer Research
巻: 43 ページ: 2859-2864
10.21873/anticanres.16455