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2023 年度 実施状況報告書

概日リズムの乱れを伴う睡眠障害が嗅上皮障害後の再生過程に与える影響

研究課題

研究課題/領域番号 23K08930
研究機関日本大学

研究代表者

菊田 周  日本大学, 医学部, 准教授 (00555865)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード嗅上皮 / 睡眠障害 / 嗅覚障害
研究実績の概要

目的:概日リズムの異常を伴う睡眠障害によって、嗅上皮障害後の再生過程がどのような影響を受けるのかについて、主に免疫組織学的手法ならびにイメージング手法によって詳細に観察する。この観察を通して嗅上皮の恒常性維持における概日リズムの役割ならびに嗅上皮再生機構を明らかにすることが目的である。初年度は2週間の概日リズムの乱れを伴う睡眠障害があっても、障害のない嗅上皮では嗅細胞数の変化を認めず、組織学的な変化は観察されないことを組織学的証明することである。

成果:睡眠障害マウスを作成するために、C57BL/6マウス (雄、10週齢)を水上の車輪環境に置いた。この環境では、車輪のない環境と比較して休息期の活動量が増加し、活動期の活動量は低下するのが観察された。また、体重や食事量、血中のコルチゾル濃度は、睡眠障害環境に曝しても著明な変化は認めなかった。これらの結果は、車輪環境はマウスに過度のストレス負荷は与えないが、概日リズムを乱す睡眠障害を引き起こす環境であると考えられる。
2週間の睡眠障害環境で飼育したマウスの脳を還流固定し、嗅上皮冠状断を作成、嗅上皮の厚み、嗅細胞数を計測した。さらに、成熟嗅細胞の指標である抗Olfactory Marker Protein (OMP)抗体を用いて、免疫組織学的な細胞動態の評価を行った。2週間の睡眠障害環境では、睡眠障害なしの環境と比較して嗅上皮厚や嗅細胞数に変化がなく、また背内側領域と腹側領域を比較しても、成熟嗅細胞数に著明な差は認めなかった。したがって2週間程度の睡眠障害では、障害のない嗅上皮細胞動態に対する影響は少ないことが確認できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

睡眠障害マウスを作成するために、C57BL6マウス(雄、10週齢)を水上の車輪環境に置くと、車輪のない環境と比較して休息期の活動量が増加し、活動期の活動量は低下するのが観察されたが、一部活動量が変化しない個体も観察された。体重や食事量、血中のコルチゾル濃度は睡眠障害環境に曝しても著明な変化は観察されなかったため理由は不明である。組織学的に検討すると、2週間の睡眠障害環境で飼育したマウスでは、睡眠障害なしの環境と比較して嗅上皮厚や嗅細胞数に変化がなく、成熟嗅細胞数も変化を認めなかった。以上から、活動量と組織学的所見の関係性については今後マウスの匹数を増やして再検討する必要が生じた。

今後の研究の推進方策

メチマゾール投与3日後から2週間、睡眠障害環境でマウスを飼育した後に脳を還流固定し、嗅上皮冠状断を作製し、嗅上皮の厚み、嗅細胞数を計測する。さらに免疫組織学的な細胞動態の評価を行う。2週間の概日リズムの乱れを伴う睡眠障害があると、嗅上皮障害後の組織再生は著しく遅延するが、この変化は嗅上皮背内側領域に限局して起こること、さらに2週間の概日リズムの乱れを伴う睡眠障害があると、細胞内NQO1発現量の低下に加えて、基底細胞の分裂能が低下することを免疫組織学的に検証する。

次年度使用額が生じた理由

実験は問題なく進んだが、予想しない結果が出ており一部計画の見直しをするよう必要があった。次年度では2週間の概日リズムの乱れを伴う睡眠障害があると、嗅上皮障害後の組織再生は著しく遅延し、この変化が嗅上皮背内側領域に限局して起こることを証明することが目的であるが、組織評価ならびに解析において当初の予定より予算額が変更になったため。
次年度は組織評価に要する備品や嗅上皮傷害や麻酔に関わる論文作成に予算を使用する予定である。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 5件)

  • [雑誌論文] Heterogeneous Damage to the Olfactory Epithelium in Patients with Post-Viral Olfactory Dysfunction2023

    • 著者名/発表者名
      Shu Kikuta, Bing Han, Tatsuya Yamasoba
    • 雑誌名

      J Clin Med

      巻: 12 ページ: 5007

    • DOI

      10.3390/jcm12155007.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Endoplasmic reticulum stress associated with lead (Pb)-induced olfactory epithelium toxicity in an olfactory dark basal cell line2023

    • 著者名/発表者名
      Bing Han, Teru Kamogashira, Shu Kikuta, Tatsuya Yamasoba
    • 雑誌名

      FEBS Open Bio

      巻: 12 ページ: 2162-2171

    • DOI

      10.1002/2211-5463.13714.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Long-term Outcomes of Non-vascularized Multilayer Fascial Closure Technique for Dural Repair in Endoscopic Transnasal Surgery: Efficacy, Durability, and Limitations2023

    • 著者名/発表者名
      Hirotaka Hasegawa, Masahiro Shin, Yuki Shinya, Kosuke Kashiwabara, Shu Kikuta, Kenji Kondo, Nobuhito Saito
    • 雑誌名

      World Neurosurg

      巻: 175 ページ: 97-107

    • DOI

      10.1016/j.wneu.2023.03.035.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 特定時期のにおい入力の有無が新生した細胞の生死を決定する2023

    • 著者名/発表者名
      菊田 周
    • 雑誌名

      におい・かおり環境学会誌

      巻: 54 ページ: 127-131

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 鼻内視鏡手術のピットフォール 鼻機能を考慮した手術2023

    • 著者名/発表者名
      菊田 周
    • 雑誌名

      日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報

      巻: 126 ページ: 58-60

  • [雑誌論文] Secondary Publication CT値測定による鼻副鼻腔内反性乳頭腫と鼻茸の鑑別2023

    • 著者名/発表者名
      佐野奈央、菊田周、近藤健二、山岨達也
    • 雑誌名

      日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報

      巻: 126 ページ: 880-881

  • [雑誌論文] 研究最前線 分子機構に基づいた嗅覚医学の新規診断・検査法の開発の試み2023

    • 著者名/発表者名
      近藤健二、西嶌大宣、菊田周、山岨達也
    • 雑誌名

      日本鼻科学会誌

      巻: 62 ページ: 225-227

  • [学会発表] 鼻機能改善を目指した内視鏡下鼻副鼻腔手術2023

    • 著者名/発表者名
      菊田周
    • 学会等名
      第3回日本大学ENTフォーラム
    • 招待講演
  • [学会発表] 好酸球性副鼻腔炎に対する新たな選択肢 dupilumabの使用経験2023

    • 著者名/発表者名
      菊田周
    • 学会等名
      城北one way one disease webinar
    • 招待講演
  • [学会発表] 「嗅覚障害の病態と治療」 慢性副鼻腔炎・感冒・アレルギー性鼻炎を中心に2023

    • 著者名/発表者名
      菊田周
    • 学会等名
      城北埼玉城北埼玉南部学術講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] どうする嗅覚障害2023

    • 著者名/発表者名
      菊田周
    • 学会等名
      千代田区医師会
    • 招待講演
  • [学会発表] 嗅覚障害に対する治療戦略2023

    • 著者名/発表者名
      菊田周
    • 学会等名
      埼玉県南西部慢性副鼻腔炎治療病診連携の会
    • 招待講演
  • [学会発表] 嗅覚障害の病因予測のための嗅覚検査の新たな活用法について2023

    • 著者名/発表者名
      菊田周、西山秀徳、原將太、小川慶、籠谷領二、西嶌大宣、近藤健二、野村泰之、大島猛史
    • 学会等名
      日本鼻科学会総会・学術講演会
  • [学会発表] 当院における外鼻鼻中隔形成術の検討2023

    • 著者名/発表者名
      小川慶、菊田周、富岡容子、籠谷領二、西嶌大宣、近藤健二
    • 学会等名
      日本鼻科学会総会・学術講演会

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公開日: 2024-12-25  

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