研究実績の概要 |
in vitroにてIL-1βが扁平上皮癌細胞の増殖浸潤にどのように影響するかと、IL-1RAがそれに対してどのような効果を持つのかを解析するため、以下の実験を行った。 ヒト口腔繊維芽細胞株JCRB9103に放射線を照射しIL-1βの産生をELISAで測定した。放射線を0,2,4,6,8Gy照射し、6時間後、24時間後のIL-1β産生量を測定したが、上昇は認められなかった。 次にヒト口腔扁平上皮癌細胞株HSC-2, HSC-3, T3M-1を用いて、細胞増殖におけるIL-1βの効果を解析した。扁平上皮癌細胞株においては、IL-1β10ng/ml, 50ng/mlの濃度において細胞が増殖する傾向が認められた。IL-1β100ng/ml以上では、再び減少に転じる傾向が認められた。T3M-1においてはIL-1βで刺激しても細胞増殖に変化は認められなかった。細胞株によってIL-1βの影響の違いが認められたが、これはT3M-1の増殖スピードが著しく速いためにIL-1βの増殖への影響が現れにくかった可能性が高い。 IL-1βの細胞増殖への影響をIL-1RAが抑制しうるか、ヒト口腔扁平上皮癌細胞株HSC-2, HSC-3, T3M-1を用いて検討した。IL-1RAの濃度を0,10, 50, 100, 200ng/mlで比較検討を行った。しかしながら、IL-1RAを添加してもIL-1βによって細胞増殖が促進される傾向は認められ、IL-1βによる増殖抑制効果は認められなかった。さらに細胞浸潤におけるIL-1βの影響をヒト口腔扁平上皮癌細胞株HSC-2, HSC-3, T3M-1を用いてinvasion assayにて検討したが、IL-1βによる浸潤能の変化は認められなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1回の放射線照射にて口腔線維芽細胞が産生するIL-1βの量はごく微量である可能性がある。in vitroでIL-1β産生をELISAで検出することは困難な可能性がある。放射線照射後の口腔線維芽細胞のRNAを回収し、リアルタイムPCRでIL-1βの発現を調べてみたいと考えている。 また、口腔繊維芽細胞から産生されるIL-1βの測定が困難である場合には、扁平上皮癌細胞からのIL-1β産生が認められる可能性もあるので、使用細胞をHSC-2, HSC-3, T3M-1等に変更して検討することも考える。 またinvasion assayはキットを変更したために浸潤能を正しく評価できていない可能性があると考えられる。パイロットスタディで用いたキットに変更して、再度実験を行うことにする。まずIL-1βによって浸潤能が変化するかどうか確認した上で、IL-1RAが浸潤能を抑制すことが可能か実験を行う。
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