研究課題/領域番号 |
23K08955
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
伊藤 吏 山形大学, 医学部, 教授 (50344809)
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研究分担者 |
松井 祐興 山形大学, 医学部, 客員研究員 (60594322)
新川 智佳子 山形大学, 医学部, 助教 (00571647)
後藤 崇成 山形大学, 医学部, 助教 (50571642)
寺田 小百合 山形大学, 医学部, 医員 (40795697)
天野 彰子 山形大学, 医学部, 医員 (50787249)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 真珠腫性中耳炎 / 遺残性再発 / 再形成性再発 / レチノイド / 中耳粘膜再生 / 分化誘導 / モルモット |
研究実績の概要 |
中耳真珠腫の治療は手術による完全摘出のみであるが、真珠腫上皮がわずかでも残れば遺残性再発を生じ、手術操作により本来の中耳粘膜によるガス交換能・圧調節能が失われれば再び鼓膜上皮が陥凹して再形成再発を来す。 当研究室はモルモットを用いた基礎研究でレチノイドの中耳粘膜再生効果を報告した。また、レチノイドには重層扁平上皮を線毛円柱上皮へ分化誘導する効果が報告されている。本研究ではレチノイドの中耳粘膜再生効果による再形成再発の抑制に加え、重層扁平上皮から線毛円柱上皮への分化誘導効果による遺残性再発の抑制による中耳真珠腫根治に向けた新規治療法の開発を目指している。 今年度は、レチノイドによる重層扁平上皮から線毛円柱上皮細胞への分化誘導効果確認の実験を開始した。まず先行研究(Choi JY, et al. Acta Otolaryngol 2004)を参考に、培養ヒト角化細胞に対しレチノイドを投与し、細胞増殖能について検討した。その結果、レチノイドのヒト角化細胞に対する増殖能の抑制効果を確認した。 また、中耳真珠腫動物モデルを作製するために、先行研究(Vassalli, L, et al. Am. j. otolaryngol 1988) を参考にモルモットへのプロピレングリコールの鼓室内投与を行った。プロピレングリコールは上皮の遊走を引き起こし、真珠腫を誘導する。プロピレングリコールの濃度や投与間隔などについてさまざまな条件検討を行ったが、再現性のある結果を得ることができず、今年度は安定した中耳真珠腫動物モデルの作製方法を確立することができず、条件を再検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中耳真珠腫動物モデルを用いた研究については、先行研究を参考にプロピレングリコールを用いてモルモット中耳真珠腫動物モデルの作製を試みているが、まだ安定した結果は得られていないため、さらなる条件検討が必要であり、研究全体の進捗状態としては遅れている。 また、今年度は当初の研究計画を一部変更し、レチノイドによる重層扁平上皮から線毛円柱上皮細胞への分化誘導効果確認の研究を行った。培養重層扁平上皮を用いた研究については、レチノイドのヒト角化細胞に対する増殖能の抑制効果を確認することができたが、培養材料の調達に時間がかかり、培養細胞実験開始に遅延が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
培養重層扁平上皮を用いた研究については、レチノイド受容体の発現状態や免疫組織化学染色などの評価も進めていく予定である。中耳真珠腫動物モデルを用いた研究については、プロピレングリコールの投与濃度や投与間隔、組織評価の方法などについて、個体数を増やしてさらに詳細に検討する予定である。中耳真珠腫動物モデルを確立でき次第、レチノイドの治療効果についても検討する予定である。また、当初の研究計画にあるように、中耳真珠腫に対するレチノイドの臨床応用に向けて、既に臨床応用されているアダパレンを用いて、中耳粘膜再生効果、重層扁平上皮から線毛円柱上皮への分化誘導効果を検討して臨床応用を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
中耳真珠腫動物モデルの完成が遅延していること、ならびに培養重層扁平上皮細胞の研究を開始するにあたって、細胞株の調達に時間がかかったため、研究開始が遅れたことにより、当初の予定よりも実験器具や試薬、その他の経費を投入する機会が少なかった。 今年度は、上記の研究成果を上げるための実験器具、試薬などの購入に加え、学会発表などの経費にも費用を使用する予定である。
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