研究実績の概要 |
好酸球性副鼻腔炎はType2炎症が関与する比較的新しい疾患概念であり、病態解明は不十分である。本疾患において凝固系の活性に反して線溶系が不活性であることが鼻ポリープ形成の一因となっている。申請者は、必須ビタミンのビタミンAとその代謝産物レチノイン酸(一連の代謝物をレチノイドと総称する)が線溶系に関わるtissue plasminogen activator (tPA)産生を促進する鼻ポリープの分解を促すものの、患者組織中ではレチノイン酸が抑制されていることを見出した。常在細菌叢により産生される酪酸がレチノイン酸代謝に関わることから、鼻腔常在菌からの酪酸産生低下が本疾患の病態のトリガーとなっていると仮説を立て、実験を用いてその関連性を解明する。本研究では、ビタミンA代謝の抑制は鼻腔細菌の酪酸産生能の低下という全く新しい観点に由来することを示すものである。 好酸球性副鼻腔炎患者の鼻腔で見られた細菌叢には以下の7種の属(Genus)から成る細菌が選出された。(Corynebacterium, Propionbacterium, Prevotella, Staphylococcus, Alloiococcus, Streptococcus, Moraxella)それらの中から酪酸の産生に関わる生成菌をもう一つ分類上の階級を詳しくした種(Species)から候補を同定した。候補菌を培養して酪酸の産生にどの程度関わっているかを確認する。
|