研究実績の概要 |
まず抗がん剤耐性の機序に関わっている上皮間葉転換(EMT)の関連転写因子(ZEB1, ZEB2, Snail,Slug)に注目して、頭頸部癌TCGAデータセットより各EMT関連転写因子と予後との相関をログランク検定に評価したところ、ZEB1(p=0.016)およびSlug(p=0.016)が高発現している頭頸部癌組織において予後が有意に悪くなることがわかった。頭頸部扁平上皮癌細胞株を用いて低用量パクリタキセル刺激に伴う代謝変化に与えるZEB1lおよびSlugの影響をin vitroで評価するため、まずSlug過剰発現SAS頭頸部扁平上皮癌株を作製した。まずQuantSeq 3’mRNA-seqを用いてSlug過剰発現に伴い変化する遺伝子を解析したところ、Slug過剰発現に伴い87遺伝子が有意に上昇、26遺伝子が減少していた。EMT関連マーカーとしてのVimentinの上昇が確認できた。解糖系およびTCA-酸化的リン酸化経路に関わる遺伝子を調べてみると、解糖系に関連した遺伝子が上昇しており、ミトコンドリア電子伝達系に関与している遺伝子が減少していた。さらにピルビン酸キナーゼMをコードするPKM遺伝子が有意に増加しており、グルコース代謝が増加していることが示唆された。続いて、48時間低用量パクリタキセルで刺激をおこなった。Control株と比較してSlug過剰発現株は僅かに増殖速度が低い傾向にあったが有意差はなかった。
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