研究課題/領域番号 |
23K08965
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉田 崇正 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (50600912)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 蝸牛 / 聴覚 / 電気生理 / ラセン靱帯 |
研究実績の概要 |
内耳蝸牛の内リンパ液高電位(EP)は聴覚に不可欠で、その破綻は難聴を惹起する。蝸牛内のラセン靱帯が定常的に有する正の膜電位(vFC)はEPの必須構成要素である。vFCは膜のナトリウム透過性に立脚するが、既知のナトリウムチャネル阻害薬には感受性を示さない。本研究課題の目的はvFCの基盤となるナトリウムチャネルの分子同定である。ラセン靱帯におけるタンパク発現パターンやEP・vFCのイオン・薬物感受性に基づき、SLC4ファミリー分子を候補分子とした。聴覚における分子機能を裏付けるために、当初はラット蝸牛内に正円窓経由でsiRNAを導入して遺伝子ノックダウンする計画だったが、期待した効果が得られなかったため断念した。代替手法として同遺伝子のノックアウトマウスを導入した。この系統のホモ欠損は難聴であることがスクリーニングで判明しているが、難聴発症の機序は不明であった。研究初年度の解析はまだ数例であるが、ホモ欠損(Slc4a10 -/-)が難聴であり、野生型・ヘテロ欠損と比べてin vitroのvFCが数十mV過分極し、in vivoではEPが同程度低下することが確認できた。この結果は、SLC4ファミリー分子がラセン靱帯の特異な正の膜電位を生み出し、EPおよび正常聴覚に必須の役割を果たすという仮説に合致する。次年度以降もin vivoおよびin vitroの電気生理実験を継続するとともに、分子生物学的な解析も併用して研究を遂行し、難聴機序の一端を解明する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
si-RNAを用いた遺伝子ノックダウン動物の作製を断念し、ノックアウトマウスの導入に切り替えたため、実験動物および実験系の確立に想定よりも時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
導入したノックアウトマウスを用いてin vivoおよびin vitro細胞内記録の実験を継続するとともに、野生型マウスを対象とした分子生物学的解析も行い、Naチャネルの分子同定を目指して研究を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
飼育動物数が見込みよりも若干少なかったため、動物飼育管理費に若干の残額が生じたが、想定の範囲内であり、次年度予算に組み込んで研究を継続する予定である。
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