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2023 年度 実施状況報告書

眼窩疾患の発症とT細胞免疫疲弊・老化は関連するのか?

研究課題

研究課題/領域番号 23K09013
研究機関大阪公立大学

研究代表者

田上 瑞記  大阪公立大学, 大学院医学研究科, 講師 (10594533)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード眼窩腫瘍 / 眼窩リンパ腫 / 甲状腺眼症 / 自己免疫疾患 / 制御性T細胞 / 免疫疲弊 / 腫瘍間質 / 上皮間葉転換
研究実績の概要

本研究の主目的は眼窩悪性腫瘍、眼窩領域の自己免疫疾患(特発性眼窩炎症、IgG4関連眼疾患、甲状腺眼症など)におけるT細胞疲弊・老化の関連を中心とした免疫機能不全と眼窩疾患の関連を解明する事である。
本研究における特に独自性と創造性が高いテーマは、何らかの理由でT細胞(Treg含めて)の殺傷能力が低下する「免疫疲弊」を探求し眼窩疾患の新規治療につなげる可能性を提示できることである。中でも、甲状腺眼症は自己免疫疾患に伴う眼疾患で免疫チェックポイント分子は免疫応答を抑制する機能を有し、自己組織への不適切な免疫応答を制御している。今回の研究でPD-1 PDーL1は正常個体群と比較して有意に高値であり、ステロイドパルス治療の前後で有意に低下した、末梢血細胞を用いたフローサイトメトリーでもoxp3++ CD45RA- s and CD127-CD25++ (制御性T細胞)が発現する、PD=1は正常検体群に比して高値であることが判明した。このことから、甲状腺眼症では、免疫を負に制御する制御性T細胞細胞が疲弊している可能性あり(負の免疫疲弊状態)、これらが自己免疫性病態の修飾に寄与している可能性が示唆された。
また、眼領域の代表的な悪性疾患である眼窩・結膜MALTリンパ腫では、次世代シーケンサーを用いたRNA-seq解析により、その組織内での上皮間葉転換系(EMT)のクラスターが大きな差があった。また、実際の組織学的な検討でもその2群の腫瘍間質部分の面積に有意差が有り、間質の増生は、その部分に生息する制御性T細胞やM2マクロファージなどの足場として存在し、これらの細胞群 は全身の正常な免疫応答である、抗腫瘍Tリンパ球などの攻撃から腫瘍本体を守る働きをしている可能性が示唆された。これらも免疫疲弊や抗腫瘍リンパ球の疲弊と関与する示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究における特に独自性と創造性が高いテーマは、何らかの理由でT細胞(Treg含めて)の殺傷能力が低下する「免疫疲弊」を探求し眼窩疾患の新規治療につなげる可能性を提示できることである。中でも、甲状腺眼症は自己免疫疾患に伴う眼疾患で免疫チェックポイント分子は免疫応答を抑制する機能を有し、自己組織への不適切な免疫応答を制御している。今回の研究でPD-1 PDーL1は正常個体群と比較して有意に高値であり、ステロイドパルス治療の前後で有意に低下した、末梢血細胞を用いたフローサイトメトリーでもoxp3++ CD45RA- s and CD127-CD25++ (制御性T細胞)が発現する、PD=1は正常検体群に比して高値であることが判明した。このことから、甲状腺眼症では、免疫を負に制御する制御性T細胞細胞が疲弊している可能性あり(負の免疫疲弊状態)、これらが自己免疫性病態の修飾に寄与している可能性が示唆された。
また、眼領域の代表的な悪性疾患である眼窩・結膜MALTリンパ腫では、次世代シーケンサーを用いたRNA-seq解析により、その組織内での上皮間葉転換系(EMT)のクラスターが大きな差があった。また、実際の組織学的な検討でもその2群の腫瘍間質部分の面積に有意差が有り、間質の増生は、その部分に生息する制御性T細胞やM2マクロファージなどの足場として存在し、これらの細胞群 は全身の正常な免疫応答である、抗腫瘍Tリンパ球などの攻撃から腫瘍本体を守る働きをしている可能性が示唆された。これらも免疫疲弊や抗腫瘍リンパ球の疲弊と関与する可能性と捉えることができた。
以上のように、自己免疫の疲弊と眼窩疾患の関与の検討について、現在のところ概ね順調に推移している。

今後の研究の推進方策

上記のような、組織間での遺伝子クラスターの変化や血液検体での臨床免疫的な検討結果を、臨床の実際の医用画像と比較し相関を確認する事により、より臨床的な意義を確認したり今後の社会実装について検討する。中でも人工知能(AI)を用いた、画像処理技術と眼窩疾患での相関について検討については既報も数が少なく、今後発展の余地が残されていると考えている。
また、同時に、現在得られた臨床検体でのさまざまな結果の差を、分子メカニズムまで落とし込み検討するために、in vitro, in vivoでのwet実験の検討を、制御性T細胞のマスター転写因子であるFOXP3を経口標識した、FOXP3-gfap mice (遺伝子変換マウス)での検討や細胞実験(結膜線維芽細胞や悪性リンパ腫細胞株)での検討準備を進めていく。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Relationship between vitreous interleukin-6 levels and vitreous particles findings on widefield optical coherence tomography in posterior uveitis2024

    • 著者名/発表者名
      Tomita Mami、Tagami Mizuki、Misawa Norihiko、Sakai Atsushi、Haruna Yusuke、Honda Shigeru
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 19 ページ: -

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0297201

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Stromal area differences with epithelial-mesenchymal transition gene changes in conjunctival and orbital mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma2024

    • 著者名/発表者名
      Tagami Mizuki、Kasashima Hiroaki、Kakehashi Anna、Yoshikawa Atsuko、Nishio Mizuho、Misawa Norihiko、Sakai Atsushi、Wanibuchi Hideki、Yashiro Masakazu、Azumi Atsushi、Honda Shigeru
    • 雑誌名

      Frontiers in Oncology

      巻: 14 ページ: -

    • DOI

      10.3389/fonc.2024.1277749

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Machine Learning Model with Texture Analysis for Automatic Classification of Histopathological Images of Ocular Adnexal Mucosa-associated Lymphoid Tissue Lymphoma of Two Different Origins2023

    • 著者名/発表者名
      Tagami Mizuki、Nishio Mizuho、Katsuyama-Yoshikawa Atsuko、Misawa Norihiko、Sakai Atsushi、Haruna Yusuke、Azumi Atsushi、Honda Shigeru
    • 雑誌名

      Current Eye Research

      巻: 48 ページ: 1195~1202

    • DOI

      10.1080/02713683.2023.2246696

    • 査読あり
  • [学会発表] 眼窩MALTリンパ腫と眼窩IgG4関連眼疾患との遺伝子発現クラスターの比較2024

    • 著者名/発表者名
      田上瑞記
    • 学会等名
      128回 日本眼科学会
  • [学会発表] 甲状腺眼症における末梢血制御性T細胞のPD-1発現2024

    • 著者名/発表者名
      坂井淳
    • 学会等名
      128回 日本眼科学会
  • [学会発表] MRIを用いた甲状腺眼症におけるステロイド前後の眼圧と外眼筋の相関2024

    • 著者名/発表者名
      春名優甫
    • 学会等名
      128回 日本眼科学会

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公開日: 2024-12-25  

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