研究課題/領域番号 |
23K09020
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
冨樫 敬太 山形大学, 医学部, 助教 (80810796)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | ぶどう膜悪性黒色腫 / CEP1347 / MDM4 / PKC / p53 |
研究実績の概要 |
ぶどう膜悪性黒色腫(uveal melanoma; UM)は眼内局所再発や遠隔転移が見られる進行例に対する有効な治療薬が現状存在せず、新規治療薬が切望されている。これまでに我々はパーキンソン病治療薬として開発された、Mixed lineage kinaseに対する阻害薬CEP1347が、p53遺伝子が野生型かつp53抑制因子の一つであるmurine double minute 4 (MDM4)が高発現している(=p53WT/MDM4highである)網膜芽細胞腫およびUMに対して、MDM4発現抑制を介してp53の活性化を促しその細胞増殖を抑制することを明らかにしてきた。この一方、90%を超えるUMにおいてGNAQ/GNA11の活性型変異が認められ、その下流のPKC-MAPK経路の活性化がUMの発症や遠隔転移に関与すると考えられているが、現在もなおPKC経路を抑制可能な薬剤は臨床応用に至っていない。この様な背景の中我々は本年度、CEP1347がUMに対して、MDM4の発現抑制だけでなく、PKC経路も不活性化していること、さらにこのPKC抑制はMDM4抑制非依存的であることを複数のUM細胞株を用いて見出した。加えて、MDM4抑制もしくはPKC抑制の一方のみでは、p53の活性化および増殖阻害は不十分であったが、両者を併用させることでより増殖抑制・細胞死が誘導されることを明らかにした。これらの結果を踏まえ、CEP1347はMDM4とPKCを二重に標的とすることが可能なUMに対する有望な標的薬候補として論文発表するに至った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請時点で得られていた予備的知見を更に発展させ、複数のUM細胞株を用いて、CEP1347がPKC経路をも不活性化すること、このPKCの不活性化にはMDM4抑制は非依存的であること、MDM4抑制とPKC抑制の併用がより効果的にp53経路の活性化を誘導することで増殖抑制を示すことを明らかにし、国際論文に発表することができた。以上の研究活動を総合的に判断すると、非常に順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、CEP1347のUM治療薬としての有効性を検証するために、ヌードマウスを用いた動物実験を進めつつある。CEP1347の投与条件・方法は既に確立済みなので、UM細胞の移植条件の検討から行っている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度までに見出した知見を皿にin vivoにも応用するために、ヌードマウスを用いた実験を行っているが、現在、条件検討に難渋しており、かつ、昨今の価格高騰により動物そのものや飼育・技術料などの維持費、動物への薬剤投与という大量の薬剤費用などが必要なため。使用計画としては、進行中のマウスモデルを用いた実験に必要な、動物料金、薬剤費、飼育料および技術料として使用する予定である。また、さらなる成果報告が発生した場合、英文校正や論文掲載費としても使用する予定である。
|