研究課題/領域番号 |
23K09024
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高柳 泰 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (50578250)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 再生医療 / iPS細胞 / サイトメトリー / 角膜 / 幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究ではヒトiPS細胞から作製する眼器官オルガノイド(SEAM)に対し、新規画像解析技術のゴーストサイトメトリー(GC)を応用し、未標識での細胞分取手法の確立や新規技術の独自性を活かした新たな細胞特性の探索を目的としている。当面の目標としては、SEAMから角膜上皮型細胞を抗体不使用の未標識で分取し、再生医療用細胞加工物(ヒトiPS細胞由来角膜上皮細胞シート)を作製する手法の確立を目指している。 当該年度は、以前に試験的解析で取得したデータも活用し、実際にGCを用いたセルソーティングを実施した。さらに分取した細胞を培養し、角膜上皮細胞シートを作製して評価した。比較対象として、従来通りに抗体を用いた蛍光標識によるセルソーティングも併せて行い、比較検証を行った。セルソーティングで分取した細胞の解析として、qRT-PCRによるマーカー発現を測定した。その結果、GCで分取した細胞は分取前の細胞集団と比較して、角膜上皮関連マーカーの発現が高く、他の眼関連マーカーの発現は低かった。これらの発現の変動は蛍光標識で分取した細胞と同様であった。この結果から、GCの無標識セルソーティングでも角膜上皮型細胞を分取出来ていると考えられた。さらに分取した細胞を培養して作製した角膜上皮細胞シートの評価では、シートの免疫染色で角膜上皮特異的マーカーの発現が認められ、細胞純度測定で重層上皮細胞を高純度で含むことが確認出来た。これらの結果から、GCを用いた無標識のセルソーティングでヒトiPS細胞由来角膜上皮細胞シートを作製出来ることが確認出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における期間前半の目標として、ゴーストサイトメトリー(GC)による無標識での角膜上皮細胞の分取、角膜上皮細胞シート作製法の確立を挙げている。今年度は、適正な条件設定を整えればGCを用いた無標識での角膜上皮型細胞の分取とそれを用いたシート作製が可能であることを確認出来た。次年度はこれらの再現性確認と蛍光標識によるセルソーティングとの比較を行う。これらの進捗状況から、本研究は概ね当初の計画通りに進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の全体計画としては、前半でゴーストサイトメトリー(GC)を用いたSEAMからの角膜上皮型細胞の分取及び角膜上皮細胞シート作製手法の確立を行い、後半ではGCならではの画像に特化した解析特性を活用して眼器官オルガノイドを用いた新たな細胞群・特性の探索的解析を行うこととしている。初年度となる今年度は、GCによる目的細胞の分取、細胞シートの作製とその解析までを行った。その結果GCによるセルソーティングでも目的とする角膜上皮型細胞の分取と、その後の角膜上皮細胞シートの培養はおおむね適正に実施できることが確認された。次年度はこれらの再現性確認を中心に検討を進め、GCを用いた無標識での角膜上皮型細胞の純化、角膜上皮細胞シート作製の手法確立を目指す。 また、主に研究期間後半の目標である新規細胞群・特性の探索については、これまでの解析でもGC特有の画像データによる細胞識別の解析データを既に集積しており、従来の蛍光標識による細胞識別との比較検証を一部進めている。前半目標の角膜上皮型細胞の分取手法確立に目途がついたところでこちらの探索的解析に順次シフトし、GC特有の観点での解析、細胞群の見極めに必要なデータの追加取得等を進め研究をまとめる方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は自機関内での解析業務を優先して実施したため、出張を伴う研究協力機関でのサンプル、データ収集業務が当初想定より少なくなった。次年度は実験の再現性確認も行うため、研究協力機関での解析、データ収取等を複数回行うことを想定しているため、次年度使用額でその活動経費を充当し研究を遂行する予定としている。
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