研究課題/領域番号 |
23K09029
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
竹澤 由起 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教 (90896581)
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研究分担者 |
加藤 英政 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (50292123)
白石 敦 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (90314963)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | PAX6 / 結膜上皮 / 表皮化生 / 血清 |
研究実績の概要 |
初年度では不死化ヒト結膜上皮細胞(iHCjEC)に結膜関連間質系成長因子(EGF,FGF7)の投与やPAX6の遺伝子導入、さらにドライアイ治療で臨床的に使用されるステロイド(デキサメタゾン、以下DEX)や血清投与などの実験的介入を行い、RNA-seqなどのデータを元に表皮化生の減弱効果を中心とした解析評価を行った。EGF, FGF7の投与後においてもiHCjECのPAX6発現は低いままであり、特にEGFはPAX6発現をさらに下方制御する傾向にあった。DEX投与は急性的にはiHCjECの表皮化生を改善したが、休薬後には角質化/表皮マーカーが再上昇しており、その効果は一時的である可能性が示唆された。iHCjECへのPAX6導入では、MIR200CHGやCLDN1等の細胞接着やタイトジャンクションに関連する遺伝子発現が上昇した。さらに血清投与は、表皮遺伝子(DSG1, SPRR1A / B, KRT1)の大幅な発現低下と結膜上皮サイトケラチン(KRT13, KRT19)の発現上昇を認め、結膜特性回復効果において最も効果的であった。iHCjECをドライアイ結膜上皮モデルとして利用した実験的介入により、PAX6は細胞接着や上皮バリア機能の維持に関わる可能性があり、グルココルチコイドと血清投与は表皮化生を減弱する効果があることが示唆された。今後阻害剤スクリーニングなどにより、血清中の因子を同定することが重要と考えられる。 初年度におけるこれらの結果については2023年および2024年日本眼科学会総会で発表し、論文報告を行っている(Exp. Eye Research採択済み)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に基づいたiHCjECに対するPAX6導入のみならず、間質系成長因子投与やドライアイモデルとして臨床的治療に基づいたステロイド、血清などの投与における上皮細胞への直接的な効果を評価し、初年度の結果として論文報告としてまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
表皮化生減弱、結膜特性回復効果が最も高かった血清中の結膜特性に関わる直接的な因子が何かを解明すべく、阻害剤スクリーニングなどを中心とした評価をさらに行っていく方向である。また、培養環境に晒していない結膜上皮細胞や不死化していないprimary cellのデータを増やし、iHCjECとの比較データをさらに増やしていきたいと考えている。結膜特性に関わる因子の候補を挙げた後はさらに低侵襲遺伝子導入法(プラズマ遺伝子導入)の活用を試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度ではRNA-seqを中心とした遺伝子解析が主であり、免疫染色などの組織学的解析のデータが乏しかったため次年度使用額が生じたものと思われる。翌年度はRNA-seqのみならず免疫染色などの形態学的、組織学的解析を含めたデータを増やしていきたいと考え、次年度使用額として生じた助成金を合わせて使用する方向である。
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