研究課題
本研究は、結膜杯細胞が分泌する粘液のシアル化糖鎖が結膜の免疫制御にどのように関わるかを明らかにしようとするものである。2023年度は、シアル化糖鎖を認識する候補分子の一群であるマウスのSiglecファミリーについて、そのクローニングを行った。マウスのSiglecファミリーは9つの遺伝子から成るが、すでにクローニング済みの1つを除いた8遺伝子のmRNAをクローニングした。クローニングされた遺伝子は細胞表面への発現用ベクターとヒトFcに結合したタンパク質として精製するためのベクターに組み込んだ。実際に、Fc結合タンパク質発現用ベクターを293T細胞にトランスフェクションしてFc結合タンパク質として発現を試み、ウエスタンブロット法で培養上清への放出を確認した。マウス結膜切片に対して培養上清での結合性の評価を行ったが、培養上清中のタンパク質濃度が十分でなかったためか、結膜杯細胞の粘液顆粒への結合は検出できなかった。このためプロテインAビーズを用いた抽出を行い、良好なタンパク質濃度を確保することができたため2024年度はこれを用いて再度粘液および組織切片を用いて結合性を調べる予定である。また、シアル化糖鎖が増加するとともにシアル化されていない糖鎖が減ると考えられることから、これらのバランスについても検討が必要であ。ムチン様物質の糖鎖を認識するMGL1,MGL2について結膜下の免疫細胞における発現を調べたところ、これらの分子を発現していることが判明した。免疫反応はこれらの受容体によっても制御されている可能性があり、シアル化糖鎖と非シアル化糖鎖の認識バランスも重要である可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
Siglecファミリー分子のクローニングと発現が概ね順調に実施できた。
2024年度は本年度抽出に成功したFc結合タンパク質を用いてその粘液糖鎖への結合性を評価する。また、アレルギー性結膜炎モデルや糖鎖合成経路の欠損マウスを用いて、これらの結合性に変化があるかどうかを調べる予定である。同時に、シアル化糖鎖以外の糖鎖とのバランスの変化が結膜炎モデルの重症度に影響するかなどについても検討していく予定である。
ほぼ計画通りに使用しわずかに残額が生じた。次年度に使用する試薬やマウスに充当する予定である。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 3件)
JCI Insight
巻: 8 ページ: e168596
10.1172/jci.insight.168596
Allos Ergon
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